本研究では,所謂「疑古派」の代表的学者である顧頡剛の学問に関し,従来の研究を発展させて次の4点の研究を行った。(1)顧が疑古史学を開始するうえで,いかなる史料を重んじたか。『詩経』を重視したことに着目した。(2)顧の疑古史学の着想が日本由来ではないかという疑問につき,白鳥庫吉・内藤湖南の著作と対照することで共通性に乏しいことを論じた。(3)顧の学問のルーツの一つであった崔述について,顧が注目した経緯につき明らかにした。(4)顧の古史研究の到達点というべき『尚書』研究について,後継者の劉起[金于]との比較も含め,その経緯と方法を論じた。
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