研究課題/領域番号 |
23720024
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
堀内 俊郎 東洋大学, 国際哲学研究センター, 研究助手 (60600187)
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キーワード | 世親 / ヴァスバンドゥ / 『釈軌論』 / 経典解釈 / 徳慧 |
研究概要 |
唯識思想の大成者である世親(ヴァスバンドゥ,インド,400年ごろ)の著作であり,チベット訳にのみ残る『釈軌論』(経典解釈方法論)の第二章の訳注とテキスト校訂を課題とする本研究の,3年中2年目の研究成果は,以下の通りである. 「チベット語訳校訂テキストの作成」については,北京・デルゲ・ナルタン・チョネ・金写の諸本を校合し,校訂テキストを作製した.徳慧の註釈の校訂は,過半は終えた. 「『百節経』『釈軌論』『釈軌論注』第二訳注研究」については,テキスト校訂と並行して,訳注を進めている. その成果の一端を,論文(日本語・英語)の形で公表した.論文は、今回の研究計画で提示した方法論に則って作成したものであり、『釈軌論』第2章経典62-63節について、テキスト校訂と訳注を行ったものである。校訂は、徳慧の注釈を参照しつつ、チベットの5版本を校合し作成したものであり、従来提示されていたテキストより、より良い版が提供できたと考える。訳注では、「菩薩地」、「声聞地」との関連の指摘により、サンスクリットを想定しつつ、チベット語訳にのみ残る本論の本箇所を厳密に読む方向を示した。また、これまで未比定であったチベット語の語句(固有名詞)のサンスクリットの比定を、関連資料を基に行った。さらに、徳慧の注釈を参照することにより、これまで誤ってとらえられていた当該箇所の構成を明らかにしえた。当該箇所の世親による解釈が『菩薩地解説』にも引き継がれていることも新たに指摘することもできた。 さらに,それに関連して得られた成果として,「法」という概念の意義について,東洋大学で開催されたシンポジウムで発表し、論文化もした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年の研究期間中の2年目としては、基礎研究として、おおむね順調ではある。 チベット語テキストの異読の採取を、北京・デルゲ・ナルタン・チョネ・金写について行い、校訂を終えた。 ただ、引用経典の比定や、徳慧註での異読との比較については、次年度の課題として残る。 これまでの成果の一端を、論文やシンポジウムでの発表の形で公表することができ、また、新たな発見も多々あった。 ただ、特に研究成果の公表について、必ずしも所期のとおりに進んだとは言えない面もある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は3年の期間中、最終年度であるので、地道に訳注とテキスト校訂の精度を高めていきたい。 完成したものについては、その成果を学会発表・論文の形で広く公表することとしたい。 研究課題と直接には関係しないが関連する研究成果も、公表し、意見交換することにより、研究のすそ野を広げ、知見を得たい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として、3,114円が残った。繰越額が生じた状況・理由は、年度末に駆け込みで書籍等を購入するよりも、来年度に繰り越した方が有効に使用できると考えたからである。だが、次年度は、最終年度であるので、計画的に使用したい。 まず、繰越額を書籍購入費に充てる。 次年度の研究費では、国内外の学会で発表をする予定である。そのための出張旅費として使用する。 また、書籍など、研究の遂行に必須の物品を購入する。また、資料のコピー等も、引き続き必要となる。 さらには、プリンタ・プリンタトナー・スキャナ・電子辞書等、研究の推進に必須の物品も、購入する予定である。
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