研究課題/領域番号 |
23720025
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
井田 克征 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員研究員 (60595437)
|
キーワード | マラティー語 / 宗教学 / インド哲学 / ヒンドゥー教 / 聖者 / バクティ / 国際情報交流 / マハーラーシュトラ |
研究概要 |
研究二年目にあたる24年度は,主にマハーヌバーヴ派の聖者伝Smrtisthalを分析し,この教団の創成期の様子を明らかにした。 4月から7月までは,Despandeによって出版された校訂本に基づいて,この資料を読解した。 そして8月に行われたマハーラーシュトラ州における現地調査では,現地の協力者の手を借りて,まだ写本状態でしか存在しないこの資料の注釈や関連資料を収集した。その結果,現地でしか知られていない刊本や資料が数多く存在することが確認されたため,それらを可能な限り収集した。 さらにプネー市周辺におけるマハーヌバーヴ寺院の現地調査を行い,現代の信徒達がいかなる宗教規範にしたがい,またいかなる祭礼を執り行っているのかなどを確認した。同時に,同寺院で生活する出家者達や出入りの信徒達から,彼らがマハーヌバーヴの教理や信仰実践、教団の歴史などをどのように理解しているのか調査した。 9月以降は,現地において収集した資料や,昨年度に扱ったSutrapath,Lilacaritraなどの初期の聖典群などを参照しつつ,Smrtisthalの訳出と内容分析を行った。そしてこの資料に描かれる教団指導者ナーグデーヴの行状や,多くの聖典編纂にまつわるエピソードなどの中に,初期の教団において彼らが最高神の化身としての祖師チャクラダルへの帰依を中心としたバクティの宗教を確立していく経緯を考察した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度における大きな目標であったSmrtisthalの内容分析などの研究は順調に進展している。また現地での調査によって予想以上の新資料が発見されたことと,現代の教団に関する知見が文献研究のみからはもたらされにくい歴史的な視点を与えてくれたことなど,予定外の進展も見られた。 しかしながら写本資料の所在をカタログ化するという試みは,資料の多さやその管轄・保管状況などの複雑さから,難航している。当面は,カタログの公開ということを考えず,あくまでも自分の必要とする資料に効率的にアクセスするためのリスト作りとして作業を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度には,これまでの研究のまとめとして,マハーヌバーヴ派をそれに先行するサンスクリット的な伝統との関係の中で捉える作業に専念する予定である。 まず同派の資料を『バーガヴァタプラーナ』などのヴィシュヌ派のプラーナと比較して,クリシュナ信仰の系譜におけるマハーヌバーヴの位置付けを探る。そしてさらに可能であれば,マハーヌバーヴ派と地域的にも時代的にも近いところで発展したジャイナ教のプラーナ文献を参照して,マハーヌバーヴ派との類似性を探る。 これら他派の資料を,これまで明らかにしてきたマハーヌバーヴの教理や教団のあり方と比較検討することで,マハーヌヴァブ派の独自性や,また正統ヒンドゥー教からの連続性および断絶性などが明らかになるだろう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に二次文献を中心とした資料の購入費,学会・研究会等出席のための国内旅費,これまでに収集した資料整理のための人件費,資料分析および論文等執筆のための物品日などを計上した。
|