研究課題/領域番号 |
23720031
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
住家 正芳 北海道大学, スラブ研究センター, 新学術共同研究員 (60384004)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会進化論 / ナショナリズム / 宗教 |
研究概要 |
平成23年度は、19世紀末から1910年代前半の中国および明治前・中期の日本を中心とした研究を行った。中国については、1910 年代の孔教会運動を起点として、社会進化論がそこに影響を与えるに至 るまでの19世紀末以降の思想・論争状況を跡づけるべく、まず孔教会運動の機関誌である『孔教会雑誌』における社会進化論的な発想からの宗教および「孔教」(儒教)理解を分析した。次に、孔教会運動の提唱者でもある康有為が孔教会を提唱するに至った経緯や、清末中国で最初に社会進化論を紹介した厳復の著作における宗教理解、梁啓超を中心に日本で発行された改革派の雑誌『清義報』における社会進化論の影響を検証した。また、これらに関する資料調査ならびに近代中国のキリスト教に関する資料収集を台北において行い、研究代表者を主催者とする研究会を開催した。一方、日本に関しては、1877 年(明治10年)前後からのスペンサー受容を起点として研究を行った。まず、井上哲次郎を中心に、加藤弘之や有賀長雄による社会進化論の受容などを検討した。また、明治前期に盛んに翻訳されたハーバート・スペンサーの著作や、スペンサー思想の通俗的流布に大きな影響を与えたベンジャミン・キッドの著作における社会進化および宗教の理解を検討した。さらに、1892 年 (明治 25 年)に始まる「教育と宗教の衝突」論争における国家と宗教についての理解を分析した。以上をもとに、学術雑誌への投稿を行うとともに(査読中)、アウトリーチ的な位置づけではあるが共著書を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、所属研究機関の移動に伴う準備などのため、海外での資料収集については予定通りに進まなかったが、その分を国内での研究にあてることで、文献資料の読み込みなどは予定以上に進行させることができた。よって、全体としてはおおむね計画通りに研究を遂行することができたと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度中は、当初予定していた海外学会への参加を見送らざるを得なくなったことや、所属研究機関の移動に関する手続きなどのため、海外における長期の資料調査ができなくなった。そのため、未使用額が発生することとなった。今後は、これらにあてる予定にしていた旅費を、次年度以降の学会参加旅費および国内外での資料調査に活用することとする。よって、次年度以降は国内外での資料調査、学会・研究会参加の回数を増やす予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度分において未使用額が発生した理由は、当初予定していた海外学会への参加を見送らざるを得なくなったことや、所属研究機関の移動に関する手続きなどのため、海外における長期の資料調査ができなくなったことによる。そのため、次年度は国内外での資料調査などの回数をできるだけ増やすこととする。また次年度以降、研究代表者の居住地が変わるのに伴い、今後は研究会開催などのための移動がより多く必要となることから、次年度使用分とした研究費を主にそれらの旅費にあてる。これによって次年度の旅費を補い、物品購入費などを確保することで、不具合が生じている既存のコンピュータを新しいものに置き換える予定である。
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