本研究は、関連から大革命以降のフランス思想史について、とくに宗教思想と社会思想との関連に留意しつつ検討することを目的とするものであった。とくに本研究が主対象としたのはピエール=ジョセフ・ プルードンの思想である。論点は大別して、第一に プルードンの思想における宗教の契機についてあらためて問い直すこと、第二に、彼の宗教論をフランス19世紀の社会思想、とくに革命後の混乱の中で問われた社会連帯・社会統合の再建の思想全体の再検討につなげることである。 プルードンと宗教の関係の概要については、研究期間中に発表した文献で一定程度明らかにすることができた。ただしより子細な研究については膨大な草稿群の検討が必要となり、より時間をかけた研究が求められる。最終年度である今年度は当初予定の期間を七か月残して中止となったが、引き続き上記の研究を継続した。最終年度中に発表された成果としては、プルードン主義者の一人と評されるG・ソレルの思想についての翻訳がある。 研究期間全体を通した成果としては、プルードンの宗教思想はそれ自身として検討されたことがあったものの、その社会思想的な意義についてはまだ明らかになっておらず、その点を示した点で意義があったと考えられる。また単なる反宗教でもなく、他方で統合の道具としての宗教でもなく、社会を律すべき「正義」の探究と結びついた彼の宗教論を通じて、19世紀フランスの社会連帯と宗教の関係として新しい側面を示すことができた。他方で今後に残る課題としては、第一にプルードンの未発表の草稿や読書ノートの検討が挙げられる。フランスで出版予定だった一部草稿の出版の遅滞もあり、これらの読解には予想以上の時間を要する。また第二に、同時代の思想家、とりわけP・ルルーのような宗教的社会主義者とプルードンの関係は必須であり、これらをも対象に収めて検討する必要があるだろう。
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