研究課題/領域番号 |
23720038
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
西山 達也 西南学院大学, 国際文化学部, 講師 (40599916)
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キーワード | 比較思想史 / フランス哲学 / ドイツ哲学 / 現代思想 / 翻訳の思想 / ハイデガー / ブランショ / バタイユ |
研究概要 |
(第2年次)20世紀における翻訳の思想の展開(1) 本年度の研究は、まず、前年度に引き続き、20世紀フランス・ドイツにおける翻訳の思想がいかにして展開したかを、「リズム」という主題に即して研究・発表した。この結果、以下の三つの成果が挙げられた。第一に、リズム概念が、古代ギリシアから現代に至るまで、ほとんど翻訳されずに(ギリシア語の原語のままほとんど形を変えずに)受け継がれてきた経緯を調査することができた。第二に、リズムの語義は、ソクラテス以前の思想家たちからプラトンを経て、近代に至るまで、非常に多様に解釈されており、もはやひとつの「語」ないし概念の翻訳として一貫性を保持し得ないまでになっており、この多義性と流動性が、現代の解釈者・翻訳者たちを魅了していることが明らかにされた。そして第三に、20世紀の思想家たち(ハイデガー、バンヴェニスト、ブランショ)が言語の本質を考察する際に、どのように「リズム」概念の肥沃な多義性を活用したかを精査することができた。以上の研究をまとめ、日本フランス語フランス文学会バタイユ・ブランショ研究会にて口頭発表を行い、これを「すべてはリズムである:思弁的翻訳論への序説」として活字化した。 次に、本年度は、フランスの思想家ジョルジュ・バタイユにおける翻訳の思想に関する研究を遂行した。バタイユにおける翻訳の思想は次の2点に要約される。一方で、バタイユは思考それ自体をある種の翻訳作業と看做しており、この翻訳作業を通じて自己と他者を媒介するプラクシスが生じると考えている。他方で、バタイユは20世紀中葉のフランスにおいてドイツの近現代思想からの影響を強く受けた思想を展開しており、この観点からもバタイユにおける翻訳の思想を再検討することができる。こうした研究の成果を、「ジョルジュ・バタイユとジャン=リュック・ナンシーにおける「思考」の探求」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「思考にとって翻訳がいかなる意味をもつか」という本研究を導く基本テーマについての考察が進み、これにもとづき、ジョルジュ・バタイユにおける「翻訳の思考」をめぐる口頭発表、および活字媒体での発表を行うことができた。 また、前年度に引き続き、リズム概念の翻訳およびその思想史的な意義について、口頭発表および活字媒体での発表を行うことができたため、十分に研究・成果公表が進展したとみなすことができる。また、世界の哲学界をリードする哲学者の一人ジャン=リュック・ナンシー氏(フランス・ストラスブール大学名誉教授)にジョルジュ・バタイユに関するインタビューを行うこともでき、これも大きな実績である。その他、ハーバード大学(アメリカ合衆国)のアレクサンダー・ツァールテン准教授と、メディア融合と翻訳の関係に関して研究打ち合わせを行い、翻訳の思想をめぐる考察を深めることができた。ただし、ナンシー氏のインタビューに関しては、書き起こしに時間を要し、未公開にとどまっているため、次年度以降適切な発表形態を選択し、すみやかに公開を図りたい。
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今後の研究の推進方策 |
第2年次に20世紀前半から中葉までのフランス・ドイツの翻訳の思想を調査することを目標としたが、ドイツにおける翻訳の思想の調査に関して十分な研究・発表ができていない。第3年次には20世紀前半から中葉までのドイツにおける翻訳の思想を調査し、それが20世紀後半にどのように展開したかというプロセスを検証する。第2年次には、「翻訳」というテーマを軸に、哲学固有の学術的方法論と文学分野での方法論との融合を試みるべく、日本フランス語フランス文学会バタイユ・ブランショ研究会にて発表を行った。この成果をもとに、第3年次には20世紀の翻訳の思想をめぐるワークショップを組織し、ここでこれまでの研究の中間成果を発表したい。 3-4年次には、フランス・ドイツの翻訳の思想を、さらに、文学との関連のみならず、古典文献学・解釈学・言語学・翻訳学との関連から横断的に調査する。また、3年次にはフランスに渡航し、ジャン=リュック・ナンシー氏(ストラスブール大学名誉教授)およびジェラール・ベンスーサン氏(ストラスブール大学教授)と研究打ち合わせをおこない、4年次に両氏を含むワークショップをフランスもしくは日本にて開催する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
第3年次には、20世紀中葉から後半にかけてのフランス・ドイツの翻訳の思想の研究に必要な書籍(文献学・解釈学・ハイデガー研究関係)を購入する。また、ジャン=リュック・ナンシー氏(ストラスブール大学名誉教授)およびジェラール・ベンスーサン氏(ストラスブール大学教授)とワークショップ開催のための打ち合わせをおこなうためのフランスへの渡航費を使用する予定である。
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