研究課題/領域番号 |
23720040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川名 雄一郎 京都大学, 次世代研究者育成センター, 助教 (20595920)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 哲学的急進主義 / 知の組織化 / ジョージ・グロート / 性格の科学 / 古代ギリシア / 国際情報交流 / イギリス |
研究概要 |
申請課題にかかるトピックのうち、本年度は主に(1)ジョージ・グロートの議論の検討、および(2)19世紀イギリスにおける「性格の科学」の展開についての分析をすすめた。(1)については、とくにグロートの1810年代後半から30年代初頭の哲学的急進主義の立場からの政治活動について、公刊されている一次文献の収集・分析をすすめるとともに、イギリスのブリティッシュ・ライブラリー、ロンドン大学図書館およびユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン図書館に所蔵されている未公刊資料の収集・分析をすすめた。この時期のグロートがベンサムやジェイムズ・ミルといった功利主義思想家の大きな影響下にあったことはこれまでも指摘されてきているが、その具体的な内実は必ずしも検討されてきてはおらず、本研究では、とりわけ未公刊資料に基づいて、この影響関係の内実を明らかにする作業をおこなった。(2)については、骨相学、オーエン主義、エソロジーという3つの流れを取り上げて、これらの科学の間の対抗関係を念頭に置きながら、「性格の科学」をめぐる19世紀前半のイギリスの歴史的文脈を明らかにした。とりわけ、骨相学とオーエン主義が細部の意見の相違を含みながらも協調関係にあったこと、J・S・ミルとA・ベインによるエソロジーという試みが、骨相学とオーエン主義の決定論的傾向に対する試みであったことの含意を検討した。この研究は、19世紀イギリスにおける「知の組織化」のプロセスを、心理学の発展というテーマと関連付けつつ検討する研究の一部としての意味ももっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(1)については、とりわけ未公刊資料の収集が想定以上に順調に進んでいるが、その分、それらの詳細は分析がすべて終わらずに次年度以降に継続しておこなう必要が生じている。ただし、全体としては当初予定した通りのペースで作業を進めることができている。「知の組織化」過程の分析については、上記(2)の研究が順調に進んでおり、これについては学会で報告するなど、ある程度まとまった形にすることができている。今後、他の学問分野を取り上げても検討をさらに進めていく必要があるが、このトピックについても順調に進められていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も前年度の研究を継続して行いつつ、リカードを中心として経済学、オースティンを中心として法学もとりあげて、功利主義思想の発展と知の組織化過程を分析していく。研究手法については、これまでも同様に、未公刊資料を含めた一次資料の収集・分析ならびに、二次文献の収集・分析および国際情報交流を通じた研究史の検討および最新の研究動向の把握を進めていく。なお、近年急速に進みつつある文献の電子化などによるアクセシビリティの向上によって、利用可能な未公刊文献の量が予想以上に膨大になっており、この点に関して研究手法を工夫していく必要がある。これに関しては、人文情報学分野の研究者との共同研究などを組織していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、当初の想定以上に未公刊資料を収集することができ、その分析に時間を割いたために、当初予定していた公刊資料の収集・分析を次年度以降に行うことになった。そのために、今年度の研究費の一部を次年度に使用することとなった。次年度の研究費については、今年度度同様に、未公刊資料の収集(書籍の購入およびイギリスその他海外における資料収集・調査)ならびに国内外の専門分野の研究会・学会に参加しての研究情報交流などに主に使用する予定である。また、特に来次年度については、人文情報学分野の研究者との共同研究を組織して効率的な文献処理の研究手法について理解を深めたいと考えており、そのためにも研究費の一部を活用する予定である。
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