研究課題/領域番号 |
23720042
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
浜 由樹子 津田塾大学, 付置研究所, 研究員 (10398729)
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キーワード | 思想史 / 汎ヨーロッパ / アジア主義 / ユーラシア主義 / 地域主義 / 国際情報交換 |
研究概要 |
(1)本年度はまず、戦間期にロシアを「ユーラシア」と捉える思想の国内における起源(思想系譜、学問的背景、イメージ)を探るべく、文献調査を行い、当該テーマで優れた研究成果を発表したカナダの研究者との交流ならびに翻訳作業を通じて、その深化をはかった。ロシアにおける「アジア」観、「オリエント」観に関する研究は、本研究プロジェクト開始以来、ここ2、3年間でめざましい発展をみせている。ロシアの「ユーラシア・アイデンティティ」形成と不可分な関係にあるこのテーマの最新の研究動向を整理し、「ユーラシア」と「アジア」との関係を明確化する必要が生じている。本年度はその集中的な調査、分析に時間を費やした。 成果の一部は、翻訳書として2013年6月に刊行予定で、現在校正作業中である。そして、近年のロシア、日本、ならびに英語圏での研究動向を整理した結果を反映させた知見は、訳者解説として同書に収められる予定である。 (2)日本の汎アジア主義、ロシアのユーラシア主義、ハンガリーやトルコ、中央アジアで同時期に勢いを得たトゥラン主義との思想・理念上の共通性を、戦間期の「非ヨーロッパ世界」における状況の中で比較検討し、同時に、その現象の図式的理解を越えた動的、政治力学的理解のために、思想交流の様子を、それぞれの接点となった人物や政治結社との関係を対象に、実証的に検証した。その成果は、論集所収の論文刊行ならびに国際政治学会での研究報告として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度、24年度の2年間の研究計画は、おおむね当初の予定通り進んでいるが、二つの点について遅れがある。 第一に、英語圏における研究動向に思いの外活発な動きがみられたため、この最新動向を追うことと資料収集に、多くの労力と時間を費やさざるを得なかった。そのため、当初予定していたロシアにおける資料調査が最終年度にずれ込むことになりそうである。 第二に、汎アジア主義の研究進度に比べて、汎ヨーロッパ主義についての調査が遅れ気味である。これは、一つには、汎ヨーロッパ構想に関する資料が全般的に古く、比較的新しい研究がわずかだということにある。戦間期の理念そのものを対象とした研究が少ない理由を明らかにし、現段階で新たな知見を付け加えることがどこまで可能であるか、今後のさらなる検討が必要である。しかし、本年度は、ロシアや中央アジアにおける汎イスラーム主義やトゥラン主義の実態、関係の理解と整理に多くの時間を費やさざるを得なかった。この課題は、やむなく最終年度に持ち越すことになりそうである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、当初の研究計画通り、論文の発表、国際学会での報告を企図している。ただし、上記の通り、若干の遅れが生じていることに鑑みて、資料収集と補強、論文執筆を同時並行で進めることになることが予測される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に研究成果の刊行や国内外での学会発表・参加に関連する出費となる予定である。
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