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2011 年度 実施状況報告書

「インテグリティ」概念の思想史的研究--「器官」から「身体」へ

研究課題

研究課題/領域番号 23720043
研究機関愛知工科大学

研究代表者

橋本 一径  愛知工科大学, 工学部, 講師 (70581552)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードインテグリティ / 指紋 / 身体論 / 医学史 / フランス / 生命倫理
研究概要

「インテグリティ(完全性、無欠性)」とは、「身体」の境界を指し示す語として、20世紀に入り法学や生命倫理学の領域で頻繁に用いられるようになった概念である。本研究は、生理学・生物学に由来するこの語の思想史的な展開を跡づけることにより、テクノロジーの発展に伴い輪郭を曖昧にしつつある私たちの「身体」の境界を制度的に確定しなおそうとする動きを、批判的に検討することを目指している。これは報告者がかねてより「指紋」をめぐって繰り広げてきた一連の研究を引き継ぐものであり、本年度はその準備として、別記の学会発表「種を区別する:20世紀初頭の日本における人種言説と指紋」において、「指紋」をめぐって生物学と制度的な言説とが融合的に論じられる様を、20世紀初頭の日本の例を通して明るみに出した。その上で本年度の研究は、8月に長期出張をおこない、フランス国立図書館において、19世紀の医学関連文献を集中的に調査した。その過程で報告者は、ミシンの使用が身体に与える影響の問題が、19世紀の医学文献において盛んに論じられていることを見出し、この問題が「テクノロジー」による「身体」への影響をめぐる初期の例として、「インテグリティ」の問題を考える上でも示唆が大きいと考えるに至った。この問題については、帰国後も継続して調査を進め、その成果は平成24年度中におこなういくつかの学会発表および論文のなかで発表する予定である。また本年度は、報告者が当研究をすすめる上での思想的な拠り所になっている、フランスの哲学者ピエール・ルジャンドルの著作のひとつを翻訳し、訳者による解説を付した上で、別記の図書として刊行した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「インテグリティ」の問題を考える上での具体的素材として、「ミシン」の歴史を見出したことは、本研究にとって重要な進展であった。一方で新たな素材を見出したことにより、成果を論文としてまとめることが、当初の計画よりやや遅れているが、この点は次年度において取り戻せる見込みである。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画に基づき、平成24年度はとりわけ「身体」と「所有」の問題についての思想史的な調査を推進するほか、海外の研究者との協力的関係を維持する。

次年度の研究費の使用計画

本年度同様、8月に長期出張をおこない、フランス国立図書館などでの調査に集中的に取り組む。またこの調査を補うため、書籍の購入や国内外の図書館からの文献複写にも研究費を割り当てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] 種を区別する:20世紀初頭の日本における人種言説と指紋2011

    • 著者名/発表者名
      橋本 一径
    • 学会等名
      日仏シンポジウム 移民と国境
    • 発表場所
      日仏会館(東京都)
    • 年月日
      2011年4月16日
  • [図書] 同一性の謎 知ることと主体の闇2012

    • 著者名/発表者名
      ピエール・ルジャンドル(著) 橋本 一径(訳)
    • 総ページ数
      120
    • 出版者
      以文社

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公開日: 2013-07-10  

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