本研究は、生命倫理などの分野で、身体まとまりを示す語として20世紀後半以降頻繁に用いられるようになった「インテグリティ」という概念の来歴を、思想史的にたどり直すものである。主な成果は以下の二点である。 ①テクノロジーの使用に伴う身体概念の変容の解明。19世紀後半に入って、テクノロジーの発展に伴い、これまでの身体概念がどのように変化したのかを、写真技術やミシンの歴史を通して具体的に描き出した。 ②「インテグリティ」概念の医学から法学への移行の時点の特定。免疫の理論の中で用いられていた「インテグリティ」が、19世紀末以降、妊娠中絶をめぐる議論の中で、初めて法的な用語として用いられ始めたことを確認した。
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