最終年度となる今年度は、日本、韓国、シンガポール、それぞれのフィールドワークを通じて得られた素材の取りまとめ、およびそれに基づくレポートマンガの制作を行った。 具体的には、日本の場合は、マンガ家・編集者をはじめとする出版現場の声を、韓国の場合は、マンガ教育に携わる高校の教員・高校生へのアンケート、および日本にマンガ留学した学生たちへのインタビューを、そしてシンガポールは現地書店員からの取材と書店利用者の声を、レポートの素材に使用した形である。 マンガ制作に際しては、学術的なレポートや論文と異なる伝達ツールであること、対象三カ国の差異ー当初の予想通り、日本は身体的、韓国は制度的、シンガポールは客体的な文化資本の傾向を有すが、近くいずれも日本化する可能性が高いーを明瞭に表現すること、長さを32頁に設定し月刊誌の読み切りに相当する分量とすること、韓国で人気を博す学習マンガと日本の娯楽マンガのバランスを考慮した登場人物やコマ割りを採用することなどが、留意された。とりわけ、それぞれの国の読者を想定し、日・英・韓の三カ国語で準備したため、国単位のみならず、年代や性別、ローカル情報なども視野に入れ、マンガとマンガ研究に関する専門用語の翻訳には時間を要した。 制作済みのレポートマンガは、研究実施計画の通り、京都精華大学国際マンガ研究センターのホームページに掲載されるが、2015年6月現在、翻訳作業の最終チェックに入った段階であるため、7月中にアップする。作業の遅れについては、ひとえに研究代表者の責任である。 なお、今回の研究期間を通じて入手したマンガ資料は、各国の文化資本の度合いを検討するために広く渉猟されており、さまざまな研究分野に応用できるものが多い。積極的に今後の研究に活用する。
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