研究課題/領域番号 |
23720048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱住 真有 大阪大学, 文学研究科, 助教 (90348897)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 池大雅 / 室町水墨画 / 文人画 |
研究概要 |
本研究は、18世紀の京都において、室町時代の画家、如拙、周文などの水墨画がどのように理解されたていたのかについて、作画上の具体的な問題として解明しようとするものである。従来、江戸時代の文人画に対する明清画の影響は、さまざまに語られてきたが、実は彼らが一見、否定していたかのように見える室町水墨画も、作画において一規範となり得ていた。これを江戸時代の文人画を代表する池大雅(1723-76)の作品を中心に、同時代のいわゆる漢画系諸派の動向も視野に入れながら考えていく。本研究は、江戸時代における室町時代の意味を問い直すことで、近世絵画史における中国の影響を立体的に考察し、様々な文化史研究の視点にも寄与するものである。平成23(2011)年度は、当初の研究計画に基づきながら主に以下の研究を行った。(1)赤壁両遊図屏風(個人蔵)についての研究:吉沢忠氏によって周文ら室町水墨画からの学習が指摘されているが、具体的な作品の検討が課題として残されている。室町水墨画のうち、周文系の山水図屏風との比較分析によって、具体的な関連作品を絞り込むに至るなどの成果を得ることができた。(2)江戸時代の版本における室町水墨画についての研究:大雅が見た可能性がある江戸時代の版本に掲載される室町水墨画と、大雅と同時代の漢画系諸派における室町水墨画継承の動向の把握に努め、江戸時代中期における室町水墨画の位置について、大凡の見通しをつけることができた。(3)調査・見学:池大雅を中心とする日本の文人画、室町水墨画に関わる国内外の作品を見学し見識を広げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である平成23(2011)年度は、寛延2(1749)年、池大雅数え年27歳の作である「赤壁両遊図屏風」(個人蔵)に重点を置きながら、室町水墨画(うち山水図屏風)との具体的な比較分析を行うこと、また江戸時代の版本に掲載された室町水墨画を網羅的に拾うことで、同時代の室町水墨画をめぐる状況の把握に努めた。このうち「赤壁両遊図屏風」については、周文系山水図屏風との比較分析によって近似する作品を絞り込むに至るなど研究成果を得ることができた。江戸時代の版本に掲載された室町水墨画については、まだ網羅的とは言いがたいが、大凡の把握に至った。研究成果は未発表であるが、現在までの研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成24(2012)年度は、池大雅筆「柳下童子図屏風」(京都府蔵)に重点を置いて研究を進める。この作品は、大雅自らその款記に「擬如拙道人筆(如拙道人の筆に擬す)」と記していることからも、室町時代に活躍した画僧・如拙の描いた「瓢鮎図」(妙心寺退蔵院蔵)を踏まえて制作されたと考えられている作品である。一方で、大雅数え年27歳の若描きから晩年の最高傑作ともいわれる扇面画帖「東山清音帖」(個人蔵)に行き着くまで描かれた「瀟湘八景」という室町水墨画を代表する画題にも注目していく。また前年度に引き続き、江戸時代の版本に掲載された室町水墨画を網羅的に拾うことで、同時代の室町水墨画をめぐる状況の把握に努めることとしたい。さらに、文人画、室町水墨画に関連する展覧会や京都社寺特別拝観など積極的に見学し、可能な限り調査によって作品を実見する機会を得たい。以上のような研究の成果によって、全体のとりまとめを行うこととしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた図書の購入を取りやめたため23年度の研究費に未使用額が生じたが、これは平成24年度に購入し、今年度行う予定の研究計画と合わせて遂行していく。
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