研究課題/領域番号 |
23720053
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
齋藤 龍一 成城大学, 民俗学研究所, 研究員 (70573385)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 中国美術 / 道教美術 / 礼拝像 / 天尊・老君像 |
研究概要 |
本研究は、中国で生まれた最大の宗教である「道教」における礼拝対象となる偶像=道教像を対象とするものである。道教像の萌芽期である南北朝時代(5-6世紀)におけるその出現と展開・変遷・地方性の諸相 について明らかにし、これまであまり注目されることがなかった美術史研究における新たなジャンル「道教の美術」の構築と発展に寄与することを目的としている。本年度は、(1)近年中国で刊行・発表が相次ぐ数多くの道教美術に関する図録・報告書、論文の収集につとめ、現存する中国南北朝時代の道教像及び関連仏像のデータと図版を集成した。これにより、来年度における中国での現地調査において、具体的にどの所蔵機関あるいは石窟・寺観を訪問する必要があるか明確にした。 これと併行し、(2)日本国内の美術館・博物館及び個人収蔵の関連作品について所在データと図版を収集し、実見調査を行った。そのなかで北魏(5世紀初頭)頃に作られ、道教像の萌芽期について考察する上で重要な、道教像であるか仏教像であるか判別しがたい一群の作例のうち、個人収蔵ながら重要な在銘作品については、実見調査のみならず所蔵者の御理解のもと大阪市立美術館に新規寄託することとしさらなる調査を続けた。 その上で、(3)大阪市立美術館にて開催した特集陳列「中国彫刻400年-雕刻時光-」において、大阪市立美術館所蔵(山口コレクション)北魏延昌四年(515)銘石造道教三尊像、北魏永煕三年(534)銘石造道教四面像をはじめ、先述の個人収蔵品を含めた関連作例を集め、道教「礼拝像」の図像的な形成過程について、具体的な作例を通じひろく一般の観覧者にもわかるよう展示・解説した。これにあわせ展示会場における関連作品の詳細な比較検討を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の計画に対し、おおむね順調に進展している。 今年度に予定していた研究のうち、関連資料の収集とデータベースの作成、国内所蔵機関での実見調査がほぼ完了した。 しかしながら平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、個人所蔵品を中心とする国内所蔵作品の調査は一部先方の受け入れ体制が整わず延期する必要が生じ、計画よりも期間を要することとなった。そのため中国への実見調査については、次年度に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果である関連資料の収集とデータベースの作成、および国内所蔵作品の実見調査に基づき、中国山西省西南部~河南省洛陽周辺、そして四川省の二地域に分布する関連作品について効率的且つ実効性のある調査を実施する。中国調査に伴う不測の事態に際しては、これまでの調査等でご協力いただいた、中国各地の考古研究機関と太い繋がりのある朱岩石氏(中国社会科学院考古研究所漢唐研究室主任)、そして西安を中心に道教美術研究をすすめる白文氏(西安美術学院副教授)らの助力を得る予定であり、本研究の確実な遂行に万全を期している。 以上を踏まえ、道教「礼拝」像が、具体的にどの地方のどの仏像により、いつどのように図像的影響を受け出現するに至ったのか解明し、これまで論じられることのなかった道教像における地方的展開の諸相を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度における主な研究費の使用は、中国への二度にわたる実見調査(山西省西南部~河南省洛陽周辺、および四川省の二地域)にかかる費用である。本研究の遂行にあたっては、一次資料である作品を細部に至るまで調査する必要性があることから、中国においても実見調査が不可欠である。また研究成果をひろく公表するための予算も計上している。
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