研究課題/領域番号 |
23720062
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
安藤 香織 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部列品管理課登録室, アソシエイトフェロー (20555031)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 美術史 / 狩野派 / 寺社宝物 / 模写 / 模本 |
研究概要 |
本研究は、東京国立博物館が所蔵する木挽町(こびきちょう)狩野家伝来の模本類(下絵、地取など含む)のうち、寺社の宝物を模写した資料の基礎的調査を実施し、江戸時代後期の木挽町狩野家当主・晴川院養信(せいせんいんおさのぶ)とその弟子達の活動を明確にすることを目的とする。さらにこれに関連して、木挽町狩野家伝来模本類を含む東博所蔵の模本、下絵、スケッチ等資料類のデータベースを制作・公開する。以上の基礎的研究と情報公開は、江戸時代から明治時代まで、幅広い時代の絵画史研究に役立つことが見込まれる。 第一に、養信一門による寺社宝物模本の特定と撮影を実施した。木挽町狩野家伝来の模本類は、歴史資料分野と絵画分野とに属している。絵画分野に属する模本類約7,500件(約11,110点)に関しては、木挽町狩野家伝来のものと明治以降に制作された模本類とが混在しているため、調査と情報整理をし、各資料に記された模写者名や模写年月日などの文字情報や、台帳情報などの分析により、木挽町狩野家伝来のものを特定する作業を進め、そのうち寺社宝物の模本についてはデジタル撮影を行った。歴史資料分野に属するものについても、同様に特定し、撮影を実施した。以上の特定作業と撮影は約半数を終了した。 第二に、データベース公開に必要な諸準備を推進した。上記の調査などで得られたデータ整理を進めると同時に、一般用にも研究用にも利用できるデータベースを目指して、既存のシステムのアレンジを進めた。また、木挽町狩野家の活動全体を明らかにしたいという本研究の目的を考えると、資料の側からだけでなく、制作者からも検索できることが望ましいため、制作者名の一覧も作成しているところである。そのためには数百人分のデータ整理をしなくてはならないが、現段階では約半数を終えたところである。以上の作業には協力者1名を依頼している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は東京国立博物館が所蔵する木挽町狩野家伝来の模本類について研究を進めるにあたり、まずは基礎的な情報収集と整理を実施した。具体的には、歴史資料分野と絵画分野に属する膨大な資料類から、木挽町狩野家伝来の模本類を特定する作業をし、かつ寺社宝物の模本と判明した資料について撮影を実施した。全体の作業量を考えると、ほぼ半数を終えたところと思われる。 また木挽町狩野家伝来の模本類を含む、東京国立博物館所蔵の模本、下絵、スケッチ等資料類のデータベース公開に向け、情報の整理を着実に推進するとともに、利用しやすいシステムを考慮して、既存のデータベースシステムをアレンジする作業を実施している。システムのアレンジについては、大方の目処がついており、実際のデータベース運用における成果が期待できる。上記のいずれの作業も、今年度分を順調に完了したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は23年度に引き続き、木挽町狩野家伝来の模本類の特定・撮影、データベース公開への準備を実施する。そして、木挽町狩野家伝来の模本類のうち、寺社宝物の模本に関しては、その基礎的な情報とともに、江戸時代後期の木挽町狩野家当主・晴川院養信とその弟子達の活動を明らかにして、発表できるようにする。また、この成果はデータベースにも反映する。 木挽町狩野家伝来模本類を含む東博所蔵の模本、下絵、スケッチ等資料類のデータベースは、一般も研究者も活用できるものにするべく、なるべく多くの意見を聞いて利便性の高いものになるよう改善を重ね、年度末の完成・公開を目指す。また、東京国立博物館で行われている様々な研究と連携をとり、データベースがより充実したものになるよう、相互協力を図れるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に交付された研究費は、主としてデータベース用のライセンス(データベース構築のための市販の基本パッケージ)購入費と、データベース作成のためのデジタル画像撮影費や作業協力者への謝金に使用した。後者は、効率的に作業を進めるには引き続き不可欠である。従って次年度も同様に、データベース作成のためのデジタル画像撮影費と、情報整理やシステムアレンジを担う作業協力者への謝金として研究費を使用させていただく予定である。
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