本年度は、まずアメリカ・ミルウォーキー所在の中国道教神像200体について樹種同定を含む総合的な調査を奈良文化財研究所客員研究員(京都大学名誉教授)伊東隆夫氏、ハーバード大学教授ジェイムズ・ロブソン氏とともにおこなった。この成果については今後共同で発表する予定であるほか、来年度以降引き続いて同地で同様の調査をおこなうこととした。また、シカゴ美術館において同館所蔵の木心乾漆造菩薩形坐像について意見交換をおこない、今後の年輪年代調査について了解を得ることができた。これについても同様に来年度以降引き続いて調査をおこないたい。 個人宅に伝来した内山永久寺扁額は、『集古十種』所載のそれと認められる新出の資料だが、年輪年代調査をおこなったところ最外層の年輪年代が1218年であることが判明した。扁額用材には辺材が残り、同用材の伐採年代は1248年前後と推定された。 そのほか、カヤ材に対する年輪年代法の適用に向けた試みの一つとして、奈良・唐招提寺所蔵の木彫像群のうち伝薬師如来立像・伝獅子吼菩薩立像・伝衆宝王蔵菩薩立像の3躯について調査をおこなっているが、現在のところ年代値を得るには至っていない。
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