本研究では、木彫仏像の年輪年代調査をおこない、その結果得られた年代観と従前の研究手法によって得られた美術史的年代観とを対照することで美術史とりわけ日本彫刻史研究における年代決定の精度を高め、さらに年輪年代調査によって得られるさまざまな用材の情報を活用することで、用材の流通や制作地の推定など造像過程の様相を明らかにするためのデータの蓄積をはかった。また、これまでほとんど検討が行われてこなかったカヤ材に対して年輪年代法の適用が可能かどうかを調査した。初期木彫像に年代を与えるための研究基盤の形成を目指したカヤ材に対する年輪年代法の適否の判断については今後も引き続いて慎重に検討を継続する必要がある。
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