研究課題/領域番号 |
23720068
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
寺澤 洋子 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 研究員 (70579094)
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キーワード | 「国際情報交換」オランダ |
研究概要 |
平成24年度では,当初の計画にもとづいた脳波計測の実験にとりかかったものの,残念ながら予想したような有意差は検出されず,実験計画の練り直しを行った。パーカッションへの情動反応にはどのような要素が含まれているか,その原点をあらためて検討,理論化し,そこから新しい実験プランへと発展させた。 【パーカッションへの情動反応の理論化】音楽的な文脈におけるパーカッションへの情動的な反応について再度考察を行った。音楽の生理反応と情動反応に関する最新の文献を改めて詳細に調査し,生理反応から意識的な反応,個人的から社会的な文脈へと二軸を用いて空間的に捉え直すことで,コラボラティブ,インタラクティブといった作曲上の仕掛けが,音楽情動に予想以上に大きく貢献することが示された。また音楽演奏上の身体性,リアルタイム性,空間的なミキシングも音楽情動に特徴的な社会性の構築に大きく影響するファクターであることがわかった。これらを,身体機能を統合させた音楽情動のコミュニケーションに関するモデルとして理論化し,ジャーナル論文として発表した。 【パーカッションを用いた情動反応測定】上記のように,音楽情動が喚起される条件を考慮し,情動的な反応が有意に得られるような実験を新しく計画した。複数人がインタラクティブに演奏を行うこと,演奏する楽曲が十分に音楽的であること,そして,身体性の条件がいくつかのレベルに調整できることが条件となる。その上で情動反応の変動を調べることを実験のゴールとした。これは,従来研究によく見られる,受動的に聴取する被験者,音楽的と言えない音楽刺激,制限された身体性といった,慣習的なフレームワークを乗り越えるものである。現在は,Schinstine作曲のボディパーカッション曲 ”Rock Trap” を題材にした計測を始めたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
年度前半の実験により,当初計画の問題点が明らかになったものの,音楽情動の喚起と共有に関して理論化を行い,新たな実験計画へ発展させることができた。理論化に関しては,研究会,学会などの口頭発表に加えて,ジャーナル論文の形で発表することもでき,高いクオリティの研究となった。また,実験に関しては,何回か予備実験を行ったところであるが,明らかに強い情動反応が得られており,演奏データおよび生理データの形で説得力のある結果が得られるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度で本研究が最終年度となるため,実験に集中し,データ取得,分析,論文化に注力する。データ分析においては,音楽データと生理データの数量的な関連づけを進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は24000円ほどであり,当初の使用計画から大きく逸脱せずに使用出来ている。この費用は,次年度の物品費あるいは謝礼として用いる予定である。
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