本研究は、中華民国期の上海における演劇とジャーナリズムとの相互連関性について考察するものである。とくに、1920年代から30年代にかけての、新聞・雑誌編集者の演劇、映画への参与の実態を調査、分析する。二十世紀中国演劇に普遍的に見られる、西欧のモダニティの受容とそのローカライズという現象を、上海に出現したタブロイド紙・映画・洋式劇場・遊戯場といった新興のメディアや娯楽文化とも関連づけて考察することを目的とする。最終年度は、以下のような研究成果を発表した。 (学術口頭発表) ○中国戯曲学院主催「梅蘭芳与京劇的伝播 第五届京劇学国際学術研討会」(北京)における学術発表「一九一五年北京的坤劇与劇評家辻聴花」(中国語、書面による)○愛知大学・神戸大学ほか主催「名古屋シンポジウム 分裂の物語・分裂する物語」における学術口頭発表「抗戦期上海における演劇とジャーナリズムの相互連関について―ふたつの『明末遺恨』と「改良」のスローガン」(中国語)○国立東華大学主催「衆聲喧「華」:華語文學的想像共同體國際學術研討會」(台北)における学術口頭発表「梅蘭芳訪日公演對日本戲劇人的影響:以福地信世為例 」(中国語)○北京大学中文系・中国文芸研究会ほか主催「新生代二十世紀中国文学研究工作坊」における学術口頭発表「二十世紀京劇的記憶与紀録」(中国語) (論文) 「「孤島」時期上海跨劇種的互動關係─兩種《明末遺恨》及「改良」之口號」(台北芸術大学『戲劇學刊』、2014年1月) これらの活動を通し、中国国内外の中華民国期演劇研究者と連携を深め、日本国内のみならず中国・台湾においても研究成果を発表し、意見交換することで、本研究の客観性を維持し、国際的な学界において認められる水準の研究を達成した。
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