研究課題/領域番号 |
23720086
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研究機関 | 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館 |
研究代表者 |
大傍 正規 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (40580452)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
第一次世界大戦以前に世界各国の映画市場を席巻していたのは、主としてフランスのパテ社やゴーモン社が製作した文芸映画や喜劇映画であった。この二大映画ジャンルが世界各国の映画製作の礎を築いてきたことは、これまでも知られて来たが、当時の映画雑誌の残存率は極めて低く、その変容過程が詳細なデータを裏付けとして示されたことはない。そこで本研究では、全102種類ときわめて残存率の高い帝政期ロシアの映画雑誌群に掲載されている作品データを分析することで、帝政期ロシアにおいても初期フランス映画が主要な位置を占めており、それらが帝政期ロシア映画の変容に大きな役割を果たしたことを明らかにしたい。本年度も帝政期ロシアの映画雑誌『キノ・ガゼッタ』『シネマ・パテ』『キネモ』等を中心に綿密な文献調査を行う一方、質量共に最大の媒体である映画雑誌『シネ・フォノ』の目次のリスト化を継続して行い、同誌に掲載されているパテ社(仏)、ゴーモン社(仏)、ハンジョンコフ社(露)、ドランコフ社(露)等により当時公開された新作映画のタイトル、ジャンル、フィルム長、価格のデータベース化を行った。その研究成果は、国際学会DOMITORでの研究発表「Reception of Film d'Art and its Impact on Japanese Sound Culture」や、スイス・ローザンヌで開催された国際シンポジウムでの招待講演「Max au Japon, ver une nouvelle gestualite comique」、東西研での招待講演「新しい身体性と編集のリズムー越境者マックス・ランデーに注がれたまなざし」に結実した(いずれも日露における帝政期ロシア映画の受容の問題について議論した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当該研究期間中に、早稲田大学演劇博物館から東京国立近代美術館フィルムセンターへの所属研究機関の変更があり、職場環境が大幅に変わったため、当初予定していたペテルブルク出張が行えず、研究計画に遅滞が生じてしまった。しかしながら、国際的な研究成果の発信として、これまで学術的交流を続けてきたフランス・パテ社研究の第一人者であるローラン・ル・フォレスティエ教授(レンヌ第二大学)とローラン・グイド教授(ローザンヌ大学)から「マックス・ランデー国際シンポジウム」に招待を受け、これまでの研究成果を海外の研究者らと共有できたことで、成果発表の面での達成度については当初の計画以上に進展している(同発表原稿は、フランス語圏の映画雑誌『1895』の「マックス・ランデー特集」に採録される予定である)。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの二年間で収集したデータを多面的に分析し、帝政期ロシアの初期映画興行に関する基盤的研究として成果を集大成する。これまで構築してきたデータベースを元に、無声映画のジャンル編成や、他の見世物興行との関わり、地域間の差異などについて考察する。地域間の差異の検討については、ロシア国民図書館(ペテルブルク)に調査出張を行なう事で、2011年度のモスクワ出張で把握できなかったペテルブルク刊行の文献資料や新聞記事の調査を進め、2011年度の調査との綜合を行う。最終的には、帝政期ロシアにおいて初期フランス映画が主要な位置を占めており、それらが帝政期ロシア映画の変容に大きな役割を果たしていたことを明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用予定は以下の通りである(残額927,072円)。①海外旅費(ペテルブルク調査出張)50万円、②複写費、図書購入費144,072円、②国内旅費(京都、学会発表)43000円、③データ入力委託費用24万円。
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