最終年度は、東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)が所蔵する「日露戦争記録映画群」のカタロギング作業を通じて、琵琶等の伴奏音楽と共に上映されていた日露戦争映画興行の実態が明らかになるとともに、同映画群が、世界的にもオリジナル版の現存が確認されていない『旅順の降伏』(ジョゼフ・ローゼンタール撮影、1905年)の「複数バージョン」を構成していることが明らかになった(『東京国立近代美術館紀要』19号、2015年)。近年、フィルム・アーカイブにおける映像の考古学的調査は世界的に大きな進展が見られるが、2012年8月以降のNFCへの所属研究機関の変更に伴い、新たに取り組んだ本研究もまた、その傾向に属している。同研究成果は、英語論文「The Multiple Versions of Joseph Rosenthal’s Siege and Surrender pf Port Arthur(1905)」と題し、国際フィルム・アーカイブ連盟が発行する学術誌『Journal of Film Preservation』(92号、2015年)に掲載された。 また、国際的な研究成果の発信として、帝政ロシアにおいて様々な伴奏音楽とともに受容されていた映画初期の喜劇王マックス・ランデーについて考察したフランス語論文「La taversee d’une star: L’impact de Max Linder au Japon et dans la Russie imperiale」がフランス語圏の学術誌『1895』の最新号に掲載される。 さらに本研究では、帝政ロシア映画研究に関する文献リスト及び映画雑誌『СИНЕ-ФОНО』の索引データを作成したが、これらの研究成果についても公表を行う予定である。
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