本研究は「無声映画の音」という観点から、帝政期ロシアにおいて発行された映画雑誌を網羅的に分析することで、帝政期ロシアにおける初期映画興行の全体像を明らかにする際の基盤を構築した研究である。本研究を通じて、第一次世界大戦以前に世界の初期映画興行の9割近くを占有し、世界各国の映画製作に少なからぬ影響を与えたフランス映画の視覚的な無国籍性とは対照的に、帝政ロシアにおいて提供されていた無声映画の伴奏音楽に、ナショナルな先行ミディアムの影響が見られたという事実が明らかになった。これらの学術的成果について、国内における紀要論文の刊行や、国際的な映画雑誌における英・仏語論文の刊行等によって公表した。
|