本研究では、マリヴォーの作劇法を中心に、18世紀フランス演劇に関する基礎的研究を行い、特に世紀前半のフランス演劇の諸相、作劇法とその特徴を明らかにすることを目的としている。 初年度は、特にマリヴォーの作劇法を上演との関連で明らかにするために、当時の演劇状況およびマリヴォー劇の上演状況を調査して作劇法との関連性を検討し、特に登場人物の創造とその機能という点から、18世紀前半の作劇法の一端を明らかにした。 二年目は、前年度に得られた成果を踏まえ、特に演技の視点から18世紀フランス演劇に関する研究を進めた。当時パリで活躍したイタリア人劇団とマリヴォーの作劇法との関連性を調査・検討し、彼らの演技様式がマリヴォー独自の作劇法形成とその発展において重要な役割を果たしている点を明らかにした。 最終年度は、これまでの研究を総括し、マリヴォーの作劇法の特異性を同時代のフランス演劇との関連において相対的に明らかにしようと試みた。また、マリヴォー劇の舞台芸術としての普遍性も検討するために、分析対象を現代演出にも広げ、作劇法と演劇性を多角的に考察した。この研究を通し、観客との関係において機能するマリヴォーの「露呈の作劇法」、「露呈の演劇性」について明らかになり、研究会で発表するとともに論文にまとめた(2014年1月)。この時代の演劇状況については、17世紀からの流れも考慮し、特に政治との関係性に注目して研究内容をまとめるとともに、同時代人ルイージ・リッコボーニによって書かれた劇場の構想に関する論を翻訳し、ともにWeb上で公開した(2014年3月)。なお、本研究を進める上で日本におけるマリヴォー研究の歴史と現状、上演状況についての調査も行ったが、日本のマリヴォー研究は国外ではほぼ知られていない。そこで、日本のマリヴォー研究について、パリ第四大学の研究会で報告した(2014年3月)。
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