研究課題/領域番号 |
23720091
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中尾 薫 大阪大学, 文学研究科, 講師 (30546247)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 個人研究 / 能楽 / 近代化 / 明治 / 大正 / 伝統 / 文化 / 演劇 |
研究概要 |
本研究は、明治維新によって壊滅的危機をむかえた能楽を支え、明治・大正期かけて能楽の存続と復活を実現した「能楽社」「能楽会」の活動について、その理論と実態を分析することを目的としている。23年度は、明治・大正期の能楽上演記録のデータベースのデータ蓄積に活動の主眼を置く計画であった。具体的には、早稲田大学演劇博物館所蔵の明治期能番組各種、雑誌『能楽』の各月上演記録から、一曲一データとして、上演年月日、上演場所、主催者、演者などのデータを入力し、データベース公開にむけての基礎作業を重点的におこなった。23年度を終了し、演劇博物館蔵の明治期能番組のデータ入力は完了し、雑誌『能楽』の明治35年~39年の上演データを入力途中であり、予定の7割程度のデータが蓄積されたという結果である。同時に行った調査としては、雑誌『能楽』や新聞記事、坪内逍遙による著述等の分析であったが、岩倉具視や池内信嘉ら、著名な後援者たちの理念における外部の視線とそれにたいする内部(能楽師)の視線の複雑に絡み合った構造について、分析を進めているところであり、この視野を深めることで、芸術の実演者と後援者、愛好者の供給状況という他の芸術分野にも関連する論が展開できる予測を持っている。24年度以降、蓄積した上演データベースとの総合的分析へと発展することで、日本社会をとりまく環境、国家制度、国民の価値観が著しく変化した明治・大正期における伝統演劇「能楽」の意義について論を構築する。また、平成23年度中に、論文、あるいは研究発表という形で成果を発表することはしていないが、これは23年度中はこれは23年度はデータの蓄積と資料の分析に専念するという当初の計画通りである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の当初の予定としては、明治大正能楽上演データベースの基礎データの蓄積に重点をおくこととしていた。その計画のうち早稲田大学演劇博物館所蔵の明治期能番組各種7点については、基本的な入力作業は完了し、今後最終チェックを行える状況である。ただし、雑誌『能楽』やその他の明治大正期の能楽関係雑誌からの能楽上演データの入力については、予定よりやや遅れており、全体として7割程度の蓄積データ数という結果であった。これは、本研究の申請時は申請者が早稲田大学演劇博物館に勤務していたため、比較的好条件で資料の調査に従事できることを前提としていたことと、アルバイト一名あたりの時間の確保が難しかったためである。前者の問題については、調査出張の回数を増やすことで対処し、後者についてはアルバイト数を増員することで対策した。また、23年度の成果としての学会・研究会などでの研究発表、論文発表などは行っていないが、これは23年度はデータの蓄積と資料の分析に専念するという当初の計画通りである。そのため、予定の7割程度のデータ蓄積という結果は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究計画は、昨年度入力したデータの残りと、今年度に予定していた上演データについて、ひきつづきアルバイトを雇用しデータの蓄積を行う。そして入力が完了している早稲田大学演劇博物館の明治期能番組資料については、最終的なデータの整備、最終チェックを行い、データベース公開にむけての技術的な作業にむけて基礎堅めをする。アルバイトについては2名×32時間×5ヶ月を予定していたが、一人当りの時間数の確保が困難なことが昨年度の実績で判明したため、今年度も人数を増やし一人の時間数を軽減することで、人件費の収支総額はを変更せず、予定データ数の達成を目指す。また、データベースの補足データとして「明治・大正期能楽関係人物年鑑」を作成する予定である。また、明治・大正期の能楽の実態については、雑誌『能楽』だけでなくさらに範囲を広げ、国立公文書、法政大学能楽研究書、国立国会図書館、主要能楽堂(上演記録資料を有する)への調査を行う。研究費については当初の予定通りで進行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は最終年度である。データベースの公開にむけての技術的な作業を行う。また、具体的な研究成果として、演劇学会などの学会・研究回で口頭発表、あるいは『演劇学論集』『演劇学論叢』などの学会誌への論文を発表する。また公開データベースの上演データについては、同じく学会誌での発表も行う。収支の予定としては、学会発表。調査のための旅費59000円、資料購入費31000円を予定している。
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