本研究は国内の地方自治体が発行している観光ガイドマップに対し、従来の観光ガイドマップから見られる諸地図記号を把握して、新たな地図記号を開発することを目的としたものである。平成23年度から24年度にかけて、国内外の様々な観光ガイドマップを収集し、その分析を行った。 前年度に引き続き平成24年度にも資料の収集を行った。より積極的に各地に出向き、当地の観光ガイドマップに対して自らユーザーの立場で、その検証と分析を兼ねた資料収集を試みた。出張地は中欧・東欧及びアジアであった。特にドイツ・オランダ・オーストリアなどの中欧はグラフィックデザインやタイポグラフィにおいて、世界的にも高い水準であるため、地図記号の分析と改良方向の設定に多いに参考になった。また、韓国は近頃国をあげてデザイン事業に力を入れており、その様子を町中の公共デザインからも伺うことができた。 以上で集められた資料の数は、日本をはじめ、アジア・東南アジア・中東・ヨーロッパ・北米・南米32カ国のおよそ180種類に及んでいる。これらの地図記号の資料を今後の研究に活用するために、国別・地域別に分類した後、スキャン・デジタルデータ化した。その研究内容の一部を持って、平成24年6月に札幌市立大学で開催された第59回日本デザイン学会春期大会では、「韓国の観光ガイドマップにおける地図記号の調査分析」をテーマに発表を行った。 分かりやすく使いやすい地図は、当地の言葉や事情に詳しくない観光客を支え、国の観光産業を活性化するためには欠かせないアイテムであり、そのためには地図記号のあり方も真剣に考えなければならない。しかし、デザインを改良または変更する場合、しかもその試みが社会への少なからずの影響が予想される場合、十分な計画と検証は欠かせない。その点で以上の研究は新たな地図記号を開発するための基盤的研究としての重要性があると思われる。
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