研究課題/領域番号 |
23720101
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
一戸 渉 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (20597736)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 和学 / 国学 / 好古 / 有識故実 / 和歌 / 上田秋成 / 荷田春満 |
研究概要 |
当該年度においては、研究計画のうち、〈18世紀日本における契沖・荷田春満・賀茂真淵の受容と展開に関する研究〉を主として遂行した。当該年度内に申請者が文献資料の調査・収集を行ったのは、国立国会図書館、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫、無窮会図書館、國學院大學図書館、国立公文書館、東京大学総合図書館、静嘉堂文庫、国文学研究資料館、宮内庁書陵部(以上、東京都内)、東丸神社(京都府京都市)、柿衛文庫(伊丹市)である。以上の各機関に直接赴き、本研究のテーマと関わる古典籍を閲覧・調査し、その内のいくつかについては、複写作成の手続きを行うった。上記の調査に基づき、以下の研究成果を得た。・荷田春満の学問の継承について荷田春満は、賀茂真淵の師として、〈国学の祖〉と位置づけられる存在であるが、従来、その学問が真淵以外にはどのように継承されたのかの全体像がやや曖昧であった。そこで、「羽倉風のゆくえ」(『朱』55号、2011/12・単著論文)において、荷田御風や沢田東江、雀部信頬などの江戸の和学者たち、また大西親盛・小沢蘆庵などの上方の和学者たちによる春満学の受容と展開について跡付け、更に羽倉訓之という19世紀初頭に活動が確認できる人物が、春満の名を持ち出しながら行っていた諸活動や伝記的事実について解明した。・上田秋成を中心とする上方和学について18世紀後半の上方を代表する和学者である上田秋成に関して、「「自像筥記」異文――秋成と自伝――」(『上方文藝研究』8号、2011/06・単著論文)を執筆し、彼の学問観と自伝との関わりについて、一定の見解を示した。更に、その秋成をはじめとする上方和学の展開について、本研究での成果の一部を生かしつつ、これまでの申請者の研究をまとめた単著『上田秋成の時代―上方和学研究―』(ぺりかん社、2012)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究活動を通じて、本年度内に単著論文2点、また、単行書1点(一部に本研究での成果を含む)を公表しており、また必要な文献資料も、本年度に行った複数回の出張調査を通じて、文献資料を中心に、従来の研究では知られていない、あるいは充分に検討されていない資料を多数見出すことができている。とりわけ、橋本経亮関係の資料は、國學院大学図書館や宮内庁書陵部所蔵のものを中心に、未紹介資料を一定数発見することができた。加えて、次年度以降にそれらの調査成果に基づいて、資料紹介や論文発表の見通しも、現時点において、ある程度まで具体化できていると認識している。以上の理由より、本年度まで、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した「研究の目的」において、本研究は〈18世紀日本における契沖・荷田春満・賀茂真淵の受容と展開に関する研究〉と〈18世紀の和学者における〈古今〉認識と文化的実践〉という二つのテーマを掲げ、その解明を研究の目的とした。本年度においては、既述のように、主として前者のテーマに即して研究活動を行ったが、次年度は後者のテーマに重点的に取り組んでゆく予定である。なお、その際、橋本経亮をひとつの軸として、彼の言説や和歌などの文芸創作活動や学問的なネットワーク形成などを考察の対象として、研究を進めてゆく予定である。また、次年度以降においても、国内を中心に各所蔵機関に直接赴いての文献資料の収集・調査を継続してゆく。また、研究の成果については、論文及び学会発表の形で公表してゆく予定である。発表先は『上方文藝研究』(上方文藝研究の会発行)及び『和歌文学研究』(和歌文学会発行)を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、引き続き文献資料調査のために必要な調査研究旅費(主な調査先として大阪市立大学付属図書館(大阪市住吉区)、京都府立総合資料館(京都市左京区)、天理大学附属天理図書館(奈良県天理市)、相模女子大学図書館(神奈川県相模原市)、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)、本居宣長記念館(三重県松阪市)、賀茂真淵記念館(静岡県浜松市)、東丸神社(京都府)、稲葉本家(京都府京丹後市)などを予定している)、及びそれらの資料の複写費、加えて本研究テーマに関係する古典籍や研究書などの書籍購入費、更に研究の遂行に必要なノートPCや撮影機材の購入のために研究費を使用する計画である。なお、収支状況報告書の次年度使用額は789円という僅少の金額であるため、おおむね当初の計画通りに研究費を使用できたと考える。
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