研究課題/領域番号 |
23720108
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
蔦尾 和宏 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50510765)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 説話 / 古事談 / 後冷泉天皇 / 後三条天皇 / 皇位継承 / 摂関 |
研究概要 |
本研究は大別して二つの軸から成る。一つには『古事談』巻一「王道后宮」を皇代紀と位置付けたとき、どのように把握され得るか、二つには歌徳説話を視座に『古事談』を読み解くというものである。研究計画では本年度に後者、次年度に前者を研究することとしたが、いずれも『古事談』という作品全体を考察する上では関連するものであるため、同時並行して研究に従事した。 本年度は『古事談』巻一において大きな位置を占める一条天皇説話群と後三条説話群を埋める三条・後一条・後朱雀・後冷泉朝説話が配列上、いかなる位置を与えられているかを明らかにした。特に後三条の異母兄の後冷泉の説話には、後三条朝との対照が企図されている、すなわち、後三条朝を光輝あるものにするために、対照的に後冷泉朝の説話に否定的な話柄が選び取られるとともに、その背後に天皇を支える摂関の地位を巡り、藤原頼通・教通兄弟の確執、具体的に言えば、後冷泉を支える藤原頼通に対して、兄と折り合いの悪い後三条を、兄とは一線を画して支える教通という構図が重ねあわされ、伏流している旨を論証、論文にまとめ審査誌に投稿、現下、掲載予定である。 また、前者については、『古事談』と引用・被引用関係にある同一の和歌説話を取り上げ、それぞれの引用過程を細かく検討し、『古事談』がもっとも歌徳を無化するかたちで説話を構成していることを明らかにするところまで、研究を進めた。しかしながら、『古事談』全体の和歌説話の一部に過ぎないため、一本の論文として成稿を見るに至らず、残念ではあるが、公表は来年度に回さざるを得ない状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一条朝説話群と後三条朝説話群を埋める半世紀についての分析が完成し、残すところの白河朝説話群の分析が完了すれば、ほぼ『古事談』巻一を皇代紀として読む試みが成立する。また、歌徳を視座とした研究テーマもほぼ論の外枠は完成している。
|
今後の研究の推進方策 |
現下、研究はほぼ予定通りに進行しているため、特別な推進方策は考えていない。本年度は巻三「僧行」の和歌の分析を中心に進め、『古事談』と和歌の関係を明らかにするとともに、和歌にまつわる言説史上への位置付けを試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
基本的に本年度と変わらない。説話・和歌の他、隣接諸分野の文献の購入に多くを宛てるとともに、研究成果の発表のための費用とする予定である。
|