| 研究課題/領域番号 |
23720111
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| 研究機関 | 九州大学 |
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研究代表者 |
宮崎 裕子 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 専門研究員 (40581533)
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| 研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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| キーワード | 文献学 / 書誌学 |
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| 研究概要 |
『石清水物語』第３系統伝本は、どのような事情によるのかは不明だが、『正三位物語』の名を冠されている。その伝本のほとんどが、｢本居宣長｣の奥書を持つことから、『石清水物語』第３系統伝本はすべて、本居宣長所蔵本から派生したものと考えられてきた。 この『石清水物語』第３系統諸伝本に関する書誌調査を実施し、平成２３年度には、(1)同系統の善本とされていた射和文庫蔵本は、本居宣長記念館蔵本（宣長自筆書入本）の影写本であり、本居宣長記念館蔵本が同系統の最善本であったこと。(2)同系統の伝本は、すべて本居宣長所蔵本を経て派生したものと考えられていたが、新出資料である石水博物館蔵本は宣長所蔵本を経ずに成立した伝本で、同系統内の別本であること。以上２点の新たな知見を得た。 (1)(2)を踏まえ、本居宣長記念館蔵本を底本として、射和文庫蔵本・石水博物館蔵本との異同を示した校本を作成し、学術雑誌への分割掲載を平成２４年３月より開始した。本居宣長記念館蔵本を底本に選定したのは、『石清水物語』第３系統本の最善本であるにもかかわらず、未翻刻のままである同伝本の紹介を目的としてである。射和文庫蔵本を校合本としたのは、同系統の善本として広く認知され、すでに全文が活字化されている（『鎌倉時代物語集成 第二巻』笠間書院）同本と本居宣長記念館蔵本とを比較するためである。また、別本である石水博物館蔵本も、同系統内の異同を明らかにするために、校合本の一つに採用している。 こうした校本の作成と、その公表によって、『石清水物語』諸伝本に関する研究を進展させることができた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では平成２３年度に、『石清水物語』第３系統伝本の中で、すでにマイクロフィルムが製作されており、紙焼写真の取り寄せが可能であるものについての書誌調査を完了させる予定であった。 しかし、実際に書誌調査を行うことができたのは、国立国会図書館蔵本と、国文学研究資料館を通して紙焼写真を入手した６本（本居宣長記念館蔵本・射和文庫蔵本・刈谷市図書館蔵本・筑波大学付属図書館蔵本・筑波大学付属図書館箱入り本・実践女子大学蔵本）の内３本（本居宣長記念館蔵本・射和文庫蔵本・刈谷市図書館蔵本。但し、実践女子大学蔵本は近代以降の写本であることが判明したため、調査対象から除外）のみである。 その理由は、『国書総目録』『古典籍総合目録』も含めて、刊行された目録類に記載されていない新出資料「石水博物館蔵本」が、『石清水物語』第３系統伝本には稀な、本居宣長記念館蔵本を経ずに成立した可能性の高い写本であることが判明したため、同本の書誌調査、並びに、本居宣長記念館蔵本との異同の確認を優先させたからである。 この調査の結果、石水博物館蔵本は、本居宣長記念館蔵本を経ずに成立した写本であり、『石清水物語』第３系統伝本の別本であることが判明した。従来、『石清水物語』第３系統に属する伝本はすべて、本居宣長所蔵本から派生した写本であると考えられており、今回得られた調査結果によって、その定説がくつがえされることとなった。 したがって、各伝本の書誌調査の進捗状況は、研究計画よりも遅れてはいるが、新出資料である石水博物館蔵本に関する調査によって、『石清水物語』の伝本研究に益する成果を得ており、本研究課題の全体としての進展は、おおむね順調であると判断した。
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| 今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、『石清水物語』第３系統諸伝本に関する本文研究、及び校本の作成であり、今後も目的達成のため、平成２３年度と同様に、各伝本に関する書誌調査・電子テキストの作成を進める予定である。
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| 次年度の研究費の使用計画 |
次年度も、平成２３年度に引き続き、各伝本に関する研究・調査を行う予定である。 したがって、平成２３年度に使用した研究経費と同様に、各種物品費、資料複写費、各伝本の所蔵元へ赴いて書誌調査を実施する際にかかる旅費などが主な必要経費となる。
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