研究課題/領域番号 |
23720112
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
日沖 敦子 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30448708)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 当麻曼荼羅 / 中将姫 / 当麻寺 / 練供養 / 絵巻 / 奈良絵本 / 説話 / お伽草子 |
研究概要 |
本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の実態を明らかにすることを目的とする。特に、檀王法林寺・西寿寺での資料調査を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理・分類を進め、17世紀の掛幅絵の制作背景、及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検証し、民衆信仰の実態を明らかにする。 23年度は『当麻曼荼羅と中将姫』(勉誠出版、2012年2月)刊行にあたり、その第一章に「浄土憧憬ー檀王法林寺蔵「中将姫臨終感得来迎図」をめぐってー」と題し、論文を執筆したほか、関連資料を新たに翻刻し所収した。また、「在米の中将姫物語ー享受の諸相ー」(『説話文学研究』46号、2012年)、「Unfolding Chujohime Lore:Following Leads from the Painted Life of Chujohime at the Taima Temple Nakanobo Cloister」(『Publishing the Stage:Print and Performance in Early Modern Japan』Center for Asian Studies University of Colorado Boulder、2011年)に研究成果を報告した。 これら一連の研究は、当麻寺に伝来する観経曼荼羅にまつわる中将姫説話に関するもので、主に絵巻・掛幅絵といった形式で伝来する中将姫説話に関する研究である。特に、拙著第一章にまとめた論文は、掛幅絵の制作の場を追究しつつ、当時の人々の暮らし、信仰形態について論じたものである。24年度も引き続き、絵画資料/説話・物語との関わりを意識しつつ、それらの文芸がどのような空間で求められ、制作されたかについて、調査/研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は出版助成(研究促進費)の交付をいただき、研究書刊行に向けた準備に時間を要したため、当初の計画以上の進展は認められないが、並行して研究活動をすすめ、当初の計画通り、おおむね順調に研究は進展している。今年度はさらなる進展を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
(1)京都・奈良にある袋中関連の諸寺(檀王法林寺、西寿寺、西方寺、袋中庵、念仏寺)に所蔵される掛幅絵の背面の調査から、結縁者名を整理・分類し、これまでの資料調査(文書や掛幅絵の箱書)に見られる名前と照合する。袋中と個々の人物を可能な限り具体的に検討する。(2)これまでの調査から明らかとなっている北出嘉兵衛らの町衆、及び(1)の調査で明らかになってきた町衆と袋中の関係について、寺院資料や袋中関連文献から具体的に検討する。(3)袋中関連寺院にある掛幅絵や付属する文学的資料(絵解き台本や説話・物語を含む資料)を調査し、17世紀の掛幅絵の制作及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、調査に必要不可欠なノート型モバイルパソコンとデジタルカメラの購入を予定している。デジタルカメラについては、これまで使用していたものはあるが、破損しているのに加え、性能も十分ではない。このほかには、関連書籍の購入と調査旅費として使用させていただく予定である。
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