研究課題/領域番号 |
23720114
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研究機関 | 埼玉学園大学 |
研究代表者 |
掛野 剛史 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (00453465)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 日本文学 / メディア / 文壇 / 戦時下 |
研究概要 |
本年度は1937年より文藝春秋社が臨時増刊として発行し、後に月刊となった時局雑誌『現地報告』について集中的に研究を行った。当該資料および関連資料を収集し、その解題と総目次を「戦時期メディアの編成と展開――文藝春秋社発行『現地報告』総目次(下)」(『埼玉学園大学紀要 人間学部篇』)として発表し、前年度にすでに発表した「「戦時期メディアの編成と展開――文藝春秋社発行『現地報告』総目次(上)」と併せて全67冊の全体像を明らかにするとともに、誌面の展開を具体的な目次細目から一覧できるようにした。またいわゆる当該雑誌の「発売禁止」処分の実態についても明らかにした。 著名な雑誌であり、また時局の展開を敏感に察知してその姿や形を変えていった戦時下の特徴的な雑誌でありながら、それを一望できるような目次がなく、その全体像を把握することが困難であったが、今回の成果によってその問題が解消し、戦時下メディアの研究の進展に大いに資することになると思われる。また文藝春秋本誌や、その他に発行していた雑誌についても、『現地報告』との連関といった新しい視点から考察することが可能になり、さらには同時期の他出版社の時局雑誌、たとえば改造社の『大陸』や第一書房の『北支』、旺文社の『新若人』などについても、その差異や同質性を考慮しながら比較考察することが可能になるため、そのことで得られる知見は大きい。今後に継続して研究を行う余地が残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた雑誌『現地報告』については、雑誌論文の形で一定の成果を挙げている。資料の入手についてはすべてを揃えることはできなかったが、これまでに収集していたものや複写を利用することで研究の進展を図った。文芸銃後運動などの文壇側の戦時体制への対応については今年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はこれまでに得られた成果を踏まえ、戦時下の雑誌メディアについてさらに研究を進めることを計画している。『大陸』『北支』『新若人』といった雑誌を対象とし、資料に基づいた分析を行うことで、この時期に乏しい基礎的な資料整備が果されるだろう。 また、文壇側の戦時体制への対応として展開された文芸銃後運動、またそこに大きな役割を果した菊池寛の動向などを検討し、メディアと文壇との相関関係を明らかにしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料の収集および複写資料の入手に使用することが多くなるが、文芸銃後運動の展開の実態について把握、研究するためには各地方の公共図書館などへの調査が必要となる場合がある。
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