研究課題/領域番号 |
23720115
|
研究機関 | 亜細亜大学 |
研究代表者 |
和田 琢磨 亜細亜大学, 経営学部, 講師 (40366993)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 太平記 / 軍記 / 絵巻 |
研究概要 |
23年度の実績は大略以下の2点にまとめられる。(1)神田本などの古態本『太平記』を中心とした表現世界の研究。(2)『太平記』および『太平記秘伝理尽鈔』の享受に関する研究。 (1)については、申請時の予定以上に研究が進んだ。申請時には、作品の擱筆部分の位置付けのみを行う予定であったが、2月に冒頭部分についての研究発表も行うことが出来た。擱筆部分についての研究は、「文学・語学」201号(査読雑誌)に投稿し、掲載を許された。これは、表現世界の問題と作品の成立期の時代環境とを関連付けて論じたものである。また、冒頭部分については、「序」の研究史を整理し、これまで見落とされてきた研究史をも取り上げ再評価することを通して、「序」がなぜ置かれ作品内で如何に機能しているのかという問題について考察した。『太平記』の研究史を整理している点でも重要な考察であると考える。 (2)については、23年度に行う予定ではなかった。しかしながら、調査の過程で、これまで注目されてこなかった『太平記』の絵巻に出会い、検討の結果、『太平記』の享受を考える上で興味深いものであることが判明した。具体的には、『太平記秘伝理尽鈔』などの『太平記』評判書の影響を受けた珍しい作品であることが判明したのである。そのために、当初の予定を変更し、この絵巻の書誌的な考察と内容の分析をすることにした。この調査は今後も続け、活字化したいと考えている。 後述するが、原本調査は予定通り進まなかったので、残りの2年で行いたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『太平記』の表現世界の研究は当初予定していたよりも進展している。作品の最終部分だけでなくそれと対応する冒頭部分についての検討・考察も出来た。これは、原本調査に行く代わりに出来た時間を当てたことによる成果である。だが、神宮徴古館本および龍門文庫蔵『太平記』の原本調査は叶わなかった。地震の影響により、本務校の予定が変わるなどしたために、予定が立たなかったことが主な原因である。 その一方で、23年度に行う予定ではなかったが、『太平記』の享受の問題に関する研究を行うことが出来た。資料の所在を確認している過程で見つけた絵巻物の調査を糸口に、近世における『太平記』の享受の問題についての研究をすることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、2つある。1つは23年度に調査した結果を公表することである。絵巻の書誌学的考察結果および作品内容の分析結果の公表の他、23年度に口頭発表した内容についても活字化したい。可能な限り、これまでの表現世界の研究をまとめ、博士論文として提出したいと考えている。 また、23年度に行えなかった原本調査も所蔵先の都合と調整しながら行いたい。予定としては、龍門文庫・聖藩文庫・京都仁和寺に調査に行くつもりである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は国内調査旅行費および資料の複写題を中心に予算を執行したい。複写は国文学研究資料館のマイクロフィルムからのコピーも利用することにする。複写する資料は、調査先の『太平記』関係資料および、『太平記』の享受に関する資料である。以下、費目ごとに分類して、今年度の予算の予定を記す(金額単位:千円)。 設備品 150(辞典類50、中世文学関係図書50、歴史資料関係図書50)。消耗品 100(パソコンやカメラの付属品等50、文具50)。旅費等 225(聖藩文庫(3日)90、龍門文庫(3日)75、仁和寺(2日)60)。その他 300(太平記大全複写代160、慶安太平記複写代30、聖藩文庫蔵資料複写代60、その他複写代50)。通信費 25。
|