研究課題/領域番号 |
23720116
|
研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
阿部 美香 昭和女子大学, 人間文化学部, 非常勤講師 (10449093)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 中世宗教文芸 / 寺社縁起 / 唱導 / 国文学 / 安居院 / 本地物語 / 箱根権現縁起絵巻 / 融通念仏縁起 |
研究概要 |
本年度は、中世宗教文芸の探究の上で重要なテクストの分析的研究を進めた。 1,安居院唱導文献の研究 歴博本『転法輪鈔』について、国立歴史民俗博物館との共同研究(「中世における儀礼テクストの綜合的研究」H20~22、代表阿部泰郎)をもとに、研究メンバーと研究を進め、翻刻・解題・論考原稿を作成し、平成24年度中の公刊態勢を整えることができた。またその経験を金沢称名寺聖教『上素帖』の本文データの作成に生かすことができた。 2,中世宗教文芸の研究 真名本『曽我物語』の宗教的基盤をなす伊豆・箱根二所権現の縁起研究では、研究成果を学術論文として公刊するだけでなく、平成23年9月サンクト・ペテルブルグ東洋大学において「日本文化・古典文学 サマーセミナー」を共同開催し「絵巻で見る温泉の神様」と題しワークショップを行ったり、平成24年1月山北町(神奈川県)の文化講演会で講演を行うなど、国内外において成果発信と社会教育活動につとめることできた。そのうち伊豆山神社での活動(画家・書道家との協同による平成の縁起絵巻の制作奉納(「走湯山秘訣絵巻」の詞書の文を作成)及び縁起についてのレクチャー等)は、熱海新聞(H23.9.20、H24.2.21)と伊豆毎日新聞(H23.9.20)、 静岡新聞(H23.11.27)に紹介されている。 また、『融通念仏縁起』の研究は、「大画面説話画の総合研究」(代表佐野みどり)の共同研究との相乗効果により、自らの研究を大きく推進することができた。具体的には、美術史、歴史学研究者との連携のもとで国内外での調査研究が進んだうえ、平成23年5月ロンドン大学(SOAS)での国際研究集会や、平成24年3月シカゴ美術館での原本調査に伴う研究報告など、国内外で研究発表を行い、着実に成果を積み重ねている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画が順調に進展しているだけでなく、共同研究や歴史学・美術史学・他の国文学研究者との連携を通し、国内外での調査研究が進んだ上に、研究成果を発信する機会としての学術論文の公刊ならびに講演会、研究会報告等を予定以上に積み重ねることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に築いた研究成果をさらに発展、統合させるべく、研究報告を積み重ねていく。特に、『融通念仏縁起』の研究が予定以上に進展しつつあるので、二所三嶋の縁起研究や安居院唱導文献の研究とあわせ、平成24年度も継続して重点的に推進していく。また、学術論文としての成果の発信とともに、社会貢献活動も継続して行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額3,603円は、経費を適切に使用した結果生じた残額である。来年度の研究調査に関わる旅費として使用する計画である。次年度の研究費の主な使用計画は、以下の通りである。1,研究成果の発表の場として6月の説話文学会大会シンポジウムをはじめ、国内外で研究発表やそれに準じるワクークショップ等を計画している。そのための準備費および旅費として使用する。2,神奈川県立金沢文庫をはじめ、国内外の美術館や博物館、寺社や文庫、図書館などに資料採訪と熟覧調査を予定している。そのための準備費および旅費として、研究費を使用する。3,研究成果の刊行を準備するため、その基礎稿を資料集として編集する予定である。そのための編集・印刷費として使用する。4,研究成果の地域社会への還元をめざした活動(文化講演など)のための準備費および旅費として使用する。5,そのほか、論文執筆やデータ入力および整理に関わる諸経費として、研究費を使用する計画である。
|