研究課題/領域番号 |
23720116
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
阿部 美香 昭和女子大学, 人間文化学部, 非常勤講師 (10449093)
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キーワード | 宗教文芸 / 寺社縁起 / 唱導 / 絵解き / 宗教儀礼 / 箱根権現縁起絵巻 / 融通念仏縁起絵巻 |
研究概要 |
中世の宗教文芸・寺社縁起の体系のなかで重要なジャンルをなす融通念仏縁起について、資料の採訪調査ならびに分析的研究を進めることができた。融通念仏縁起は、これまで主に美術史研究の側から研究が進められてきたが、そこに文学研究の研究方法を導入し、絵巻の成立と展開に関する重要な特色を本文の分析的研究からうかびあがらせた。それを通して、絵巻の制作が、南北朝から室町時代にかけての公武政権と、絵巻制作の中心にいた勧進聖良鎮との巧みな連携のもとにあったことを、絵巻そのものから明らかにし得たことは、中世における融通念仏の社会的意義の解明の上からみても大きな意義があった。その研究成果は、説話文学会50周年記念シンポジウム(6月、立教大学)において、招待発表として報告を行った。 また、本研究課題を通して得た研究の成果は、学会のみならず市民向けの公開シンポジウムや講演会のかたちで、地域社会に発信することもできた。たとえば平成25年2月には、伊豆山神社で、新出の御神影を紹介し近世における伊豆山権現復興の歴史について報告した。その活動は地元新聞にも取り上げられ、紹介されている(熱海新聞)。 さらに、名古屋市博物館で催された「大須観音展」(平成24年12月1日~平成25年1月14日)では、イラストレーターと協同し、子供向け冊子を刊行することができた(『かのんちゃんとまめおにくんと行く 大須観音の宝物ガイド』)。これは、名古屋市博物館並びに真福寺大須文庫調査研究会に集う国文学、歴史学、仏教学、思想史研究者との連携研究の成果を文化創造・表現活動の域にまで到達させた試みとして、特筆しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の中核をなす、安居院唱導資料の研究は、歴博本『転法輪鈔』の分析的研究をはじめ順調に進んでいる。特筆すべきは、『上素帖』の研究を通して見いだされた『融通念仏縁起絵巻』の研究の進展である。その成果は説話文学会シンポジウムで報告を行ったほか、広く社会に発信するための論文化を積み重ねることができた。それらは平成25年度には説話文学会50周年記念論集や美術史論集等において刊行される予定である。諸本調査の成果も蓄積されつつある。『融通念仏縁起』研究は当初の研究計画・想定を超えた成果であり、その意味に於いて、本研究は計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23・24年度の研究成果を踏まえて、平成25年度は次の5つを柱に研究を進める。 ①『上素帖』の解題作成―『上素帖』所収表白の分析的研究を進め、解題作成を行う。 ②唱導・儀礼テクストの研究―金沢文庫や寺院に所蔵されている唱導資料や、涅槃講式をはじめとした儀礼テクスト、神道資料を採訪調査し、分析的研究を進めていく。 ③中世寺社縁起の研究―『箱根権現縁起絵巻』や『融通念仏縁起絵巻』などの寺社縁起とそれに関わる仏事や祭礼について、現地でのフィールドワークを含めた調査と分析的研究を進めるとともに、美術史、歴史学研究者との連携を通して、研究の社会的発信につとめていく。特に『融通念仏縁起』の研究は、『上素帖』の研究から派生し展開した新研究として本研究課題に位置づけ、重点を置く。 ④堕地獄・蘇生譚に関わる研究―美術史、歴史学、民俗学研究者とも連携しながら、醍醐寺焔魔堂に関する研究など、堕地獄・蘇生譚に関する研究を進める。 ⑤中世東国の宗教文芸に関する綜合的研究―①~④の研究成果を踏まえて、中世東国の宗教文芸の綜合的研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に資料の採訪と調査、研究発表のための旅費や報告書の作成、備品購入に使用する。 特に、融通念仏宗総本山大念仏寺で行う講演会(5月)のための資料集の編集・印刷・製本費として使用する。これは、平成23・24年度科研費による研究成果の報告書であると同時に、科研費による研究成果を伝承者と地域社会に還元するためのものである。 また、10月には、アメリカのイリノイ大学にて国際研究集会に参加し、クリーブランド美術館にて絵巻の調査とワークショップを行う予定である。そのための旅費として、科研費の使用を計画している。
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