研究課題/領域番号 |
23720120
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
青山 英正 明星大学, 人文学部, 准教授 (10513814)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国文学 / 日本史 / 出版 / 国学 / 近世文学 |
研究概要 |
平成二十三年度における、本研究の目的および実施計画は以下の通りであった。城戸千楯の文学活動については、千楯の書簡を調査、翻刻し、年代や固有名詞を特定した上で公表する。また、千楯の著作リストを完成させる。書林恵比須屋市右衛門としての出版活動については、出版書目をリスト化し公表する。また、城戸家と呉服商・両替商の恵比須屋島田八郎左衛門家との関係を明らかにし、書林恵比須屋市右衛門の経営の背景を明らかにする。 以上の計画に対して、本年度は、近江大津の狂歌師伊東颯々宛の城戸千楯書簡38通(個人蔵)を翻刻し、年代や固有名詞を特定して注と解題を付し、公刊した。その過程で、京都黒谷金戒光明寺の城戸家墓碑と同寺西住院に所蔵される過去帳『ゑびす屋嶋田一統霊名簿』との照合や、京都の町方文書や三井文庫所蔵史料の調査をおこない、城戸家独立の経緯や家族構成、また城戸家が京都の呉服商・両替商恵比須屋島田八郎左衛門家一統に属することなどを明らかにした。さらに、書簡の解読を通じて、千楯が鐸舎の名義を大橋長広に譲ったのが天保十四年と考えられること、島田八郎左衛門が狂歌師菊廼舎真恵美であり、天保期の千楯が、京都や近江を始めとして西日本の和学者や狂歌師などと盛んに交流していたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
城戸千楯の文学活動については、これまでほとんど知られていなかった近江の和学者や狂歌師との関係を、書簡の翻刻を通じて明らかにすることができた。これは計画以上の成果であった。しかしながら、著作リスト作成に関しては、完成までさらなる調査が必要である。 書林としての活動について、出版書目のリスト化は二十三年度中におおむね終了し、若干の未調査分を加えた上で二十四年度中に公表する予定である。城戸家と島田八郎左衛門家との関係は、計画以上の成果が得られた。 よって、全体としてはおおむね当初の計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
整理した恵比須屋市右衛門出版書目を、二十四年九月刊行の「書物・出版と社会変容」に公表する。また、書簡などの関連資料や著作の調査を継続するとともに、これまでの調査で明らかになった千楯の交友関係や門人層のリストを整備する。そして、これらの作業を通じて得られた知見を、同十二月の「書物・出版と社会変容」研究会において口頭発表した上で、論文として世に問う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料整理のため、2穴ファイル10冊などの文具代を追加で計上する(15千円)。その他大半の研究経費は、資料調査のための国内旅費およびそれに伴う資料複写代である。具体的には、熱田神宮、本居宣長記念館、神宮文庫、九州大学、岩国徴古館などの調査を予定している。
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