城戸家の本家である豪商恵比須屋島田八郎左衛門家とその一統に関する資料の調査と検討を行った。 これまで島田家については、商業史からのアプローチしかされてこなかったが、今回同家の文化活動に光を当てた結果、島田家は、本草書『花彙』を著した島田充房や、狂歌師菊廼舎真恵美として知られる島田周忠らが輩出した家であること、またその一統の大路家からも、主に法帖を出版する書肆長松堂を営んだ延義や延貞、そして日蓮宗系の本門仏立講の開祖日扇(長松清風)らが輩出するなど、文化的に高い水準を有する一統であったことがわかった。 上記の成果を踏まえ、島田家の財力や人脈を視野に入れて城戸千楯をはじめとする京都鈴屋門人の活動の再考を促す論文の発表と、学会発表をおこなった。 また、(財)石水博物館所蔵の城戸市右衛門書簡の撮影と翻刻も開始し、伊勢商人の蔵書形成に果たした書肆城戸家の役割について知る手掛かりを得られたが、これについては調査を継続する予定である。
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