研究課題/領域番号 |
23720128
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
平野 多恵 成蹊大学, 文学部, 准教授 (60412996)
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キーワード | 釈教歌 / 国際研究者交流 / 慈円 / 続千載集 / 後宇多院 / 新千載集 / 新後撰集 / 女性と仏教 |
研究概要 |
今年度は次の四点について研究を進めた。 まず一点目は、昨年度に引き続いて、中世後期に編まれた勅撰集の釈教歌の分析を行った。中世後期に編まれた勅撰集所載の釈教歌のうち、後宇多院の命による『新後撰集』と『続千載集』、そして足利尊氏による初の武家執奏の勅撰集『新千載集』に注目し、釈教部に当時の為政者の信仰や政治性が反映されていることを明らかにした。上記の成果を和歌文学会12月例会(於白百合女子大学)において口頭発表「中世後期の勅選集における釈教歌―『新後撰集』『続千載集』『新千載集』その宗教性と政治性」を行った。 二点目は、古代から中世までの釈教歌の歴史を辿りながら、とくに中世における釈教歌と女性との関わりを考察した。その成果を、北京外国語大学日本学研究センターにおける国際シンポジウム「女性・文学・仏教」で「中世における釈教歌と女性」として発表した。このシンポジウムを通して、中国、アメリカ、韓国、日本の研究者と「女性・文学・仏教」をテーマに議論し、情報交換を行った。 三点目は僧侶による釈教歌の文体的な特質を明らかにした。釈教歌は、漢文による仏教経典をやまとことば(和語)で表現することを基本とするが、僧侶による釈教歌については、漢語や梵語による仏教語をそのまま用いたものがある。釈教歌のスタイルは、この二つに大きく分けられることを明らかにし、慈円などの高僧が仏教語をそのまま取り込んだ歌を多く詠んでいることを指摘し、慈円などの高僧との和歌の贈答や法会への参加によって、貴族歌人たちも仏教語を和歌に詠み込むようになったと結論付けた。この成果は、「釈教歌の文体」『日本文学』2014年7月号(掲載予定)として発表を予定している。 四点目は『明恵上人歌集』を丹念に注釈し、明恵の和歌の全貌を明らかにした。その成果を『秋篠月清集・明恵上人歌集』(明治書院、2013.12)として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として、〈1〉大寺院における僧の詠歌活動、〈2〉時代の思想を反映する勅撰集、〈3〉中世の思想を体現する僧侶、〈4〉和歌と仏教が出会って生まれた和歌即真言観という四点がある。今年度は、このうち〈2〉と〈3〉を中心に研究を行った。その他に、北京日本学研究センターにおける国際シンポジウムを契機として、「女性」という視点から釈教歌を新たに分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究計画の最終年度であるため、〈1〉大寺院における僧の詠歌活動、〈2〉時代の思想を反映する勅撰集、〈3〉中世の思想を体現する僧侶、〈4〉和歌と仏教が出会って生まれた和歌即真言観という四つの研究目的を統合し、仏教が和歌に与えた影響を分析し、仏教を軸とした和歌史の構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究用のコンピュータ周辺機器の購入を予定していたが、機種の選定が遅くなってしまったため。 2014年度4月の時点で、昨年度に購入予定の機器を購入した。
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