研究課題/領域番号 |
23720133
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
松岡 信哉 龍谷大学, その他部局等, 准教授 (50351333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 持続発展教育 / 現代アメリカ文学 / マイノリティ |
研究概要 |
本研究課題においては、現代アメリカ文学における自然と人間の関係を、持続可能性、もしくは持続可能な発展というキーワードに即して検証してゆくことが目的である。その際、ヨーロッパ系白人種の価値体系の外部にあるようなマイノリティの視座、もしくは仏教のような非アメリカ的文化の立場からこの持続可能性の問題を探ることを目指している。 平成23年度前期は、研究計画に基づき、ネイティブ・アメリカン作家が表象した持続可能な自然と人間の関係を探るべく、文献収集と精査を進めた。この作業を通して今後より深く研究を進める作家群を絞り込み、現在調査を進めている。マーモン・レスリー・シルコーのCeremonyについてはデータ整理を行い、持続発展教育のための教材化案を作成。この成果は所属学部のコロキュームでの研究発表によって公開した。 平成23年度後期には、持続可能性の問題をマイノリティの視点から考察すべく、ユダヤ人や黒人の登場人物を扱ったアメリカ文学作品を研究した。具体的にはロバート・ペン・ウォレンのWilderness, およびAll the King's Men、そしてウィリアム・フォークナーのAbsalom, Absalom!を取り上げ、ユダヤ人や黒人が南北戦争という背景の中でどのように描かれ、また持続可能な自然と人間の関係についてどのような示唆を与えうるのかを考察した。この作業の成果をアメリカ文学会北海道支部の研究談話会で公開し、フィードバックを得た。現在、口頭発表もしくは論文発表の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度はネイティブ・アメリカン作家の資料を収集・精読し、持続可能性の問題を考察する準備を進める計画であった。計画はおおむね順調に推移し、マーモン・レスリー・シルコーの作品のデータ整理と教材化素案が完成した。また成果の公開も行い、聴衆からのフィードバックに基づいた教材化案の洗練を準備しているところである。また研究目的として設定したマイノリティの持続可能性表象の考察のため、アメリカ南部作家の南北戦争物語におけるユダヤ人、黒人と、持続可能性表象の関連についても研究を発展的に進めることができた。中間段階の研究成果については口頭発表を行い、現在論文投稿準備中である。以上から、本研究は当初予定したネイティブ・アメリカンの持続可能性表象にとどまらず、ユダヤ系、もしくは黒人などの他のマイノリティの持続可能性表象の検討に進んだ点から、計画以上の進展を示したものと自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度前期には、アメリカ文学における仏教思想の影響を自然と人間の持続可能な関係の観点から考察してゆく。具体的には、ジャック・ケルアックなどビート作家やその系譜に連なるロバート・パーシグなどの作品を精査し、持続可能性の問題を考察する。また以下の前年度の研究成果を国内外の学会で発表するための準備を進めてゆく。1. シルコーのCeremonyにおける狩りと儀式のテーマと持続可能性。2. ウォレンのWildernessにおけるユダヤ人表象と持続可能性。3. ウォレンのAll the King's MenとフォークナーのAbsalom, Absalom!における奴隷制の問題。1.についてはESDの教材案作成、2.と3.については論文の形での発表を準備している。また2.と3.のテーマを総括し、持続可能性の問題を考察する口頭発表を計画中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記「今後の研究の推進方策」に示した通り、平成23年度の研究実施によって得られた成果を国内の学会で発表する準備を進めており、申請書の研究費の使用計画にもそのための費用が計上されている。また申請書ではアメリカでの仏教の影響を調べるためのサンフランシスコ現地調査の予算が計上されているが、平成23年度の計画が予定より進展したため、ミズーリ州のThe Center for Faulkner Studiesで開催予定のカンファレンスでの研究発表に応募する準備を現在進めているところである。その他としては仏教と持続可能性の問題を考察するための資料購入費が計上されている。計画通りの支出に努めたい。
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