研究概要 |
18世紀イングランドにおけるスコットランド・バラッド・オペラと、「スコットランドらしさ」あるいは「スコットランド像」の形成について、① イングランドで製作されたバラッド・オペラと、そこで使用されたスコットランド・バラッドと、② スコットランドの知識人による牧歌詩の両面から分析することができた。 とりわけ、『パティとペギー』(Patie and Peggy,1731)、『ハイランド・フェア』(The Highland Fair, 1731)等、1730年代に製作された、スコットランドを舞台にしたバラッド・オペラと、そのバラッドの歌詞の変遷の分析から、スコットランド・バラッドの使用によって、ロンドンの劇場では、自然を愛する無垢で牧歌的なスコットランド像が形成されていったことを明らかにした。さらに、スコットランドの詩人アラン・ラムゼイ(Allan Ramsay)のいくつかのバラッド集と、牧歌詩『優しき羊飼い』(The Gentle Shepherd, 1725)を分析し、そのような牧歌的スコットランド像は、いわばスコットランドの穏健なジャコバイト知識人の、スコットランドの〈伝統〉を発見・保持しつつ、イングランドとの融和を模索しようとする、生き残りの戦略によっても生成されていったことを明らかにした。
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