研究課題/領域番号 |
23720137
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
高山 智樹 一橋大学, 社会(科)学研究科, 特任講師 (70588433)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流(イギリス) / カルチュラル・スタディーズ / レイモンド・ウィリアムズ / テリー・イーグルトン |
研究概要 |
平成23年度の主たる研究成果は、大きく2つに分けることができる。1つ目の成果は、夏期に実施したイギリスへの調査旅行であり、そこにおいて、ウェールズのスウォンジー大学のリチャード・バートン・アーカイブに収められているレイモンド・ウィリアムズ・ペーパーズ、ウェールズ国立図書館に収められているレイモンド・ウィリアムズ・ペーパーズ、及び、レディング大学のスペシャル・コレクションに収められているチャット&ウィンダス・レコーズへのアクセス状況と内容とを確認することができた。そして、ウィリアムズの私信などを通じて、ウィリアムズが同時代の知識人と取り結んだ交友関係などが確認できたと同時に、入手困難なウィリアムズの雑誌記事のコピーなどを入手することが出来た。 2つ目の成果は、「文化研究」そのものの学問的な検討作業の実施であり、そこにおいて、「文化研究」の目的・方法論・意義などの確認・整理を行った。とりわけて、ウィリアムズの文化論の再検討、及びその後を継いだテリー・イーグルトンの文化論の検討、さらには現代の文化研究の概観などを通じて、今日の「文化研究」の学問的位置づけについての考察を行った。その結果として、アカデミックなレベルにおいて、いまだに「文化」概念をめぐる合意が確立していないこと、そのため、「文化」の研究が「消費」ないしは「商品」の局面に限られてしまっていること、もしくはその一方で「文化」と「社会」概念とが未分化になってしまっている状況などが確認された。これらの作業の結果は、平成23年12月10日、11日に開催された社会文化学会第14回全国大会のシンポジウム(12月10日)の基調報告において、「私たちはどのような『文化』を生きているのか」と題して発表した。そこでは、上述の状況が確認されると同時に、「支配的文化」の研究の重要性を強調した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、イギリスの各所に所蔵されている資料に関しては、そのアクセス状況や内容については予定通りに確認が出来た。ただし、版権上の問題によって、アクセスができなかったり入手できなかったりした資料も一部存在した。さらに、参加を予定していた、レイモンド・ウィリアムズ・ソサイエティ主催の講演会やセミナーには、日程上の都合で参加することができなかった。 また、イーグルトンの文化論に依拠した、文化研究の方法論の検討という課題については、ある程度の成果を上げることができ、その成果について学会発表を行うこともできた。ただし、その作業に時間を費やしたために、イーグルトンの他の著作の読解については、当初予定していたほどの進展は見られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に際して、まずもって必要なことは、レイモンド・ウィリアムズの文化論が持つ今日的な意義、及びその後を継いで研究を行っているテリー・イーグルトンをはじめとする文化研究者たちの研究の妥当性を検討し、さらにはその前提となる、生前のウィリアムズが様々な研究者や社会運動家と取り結んでいた交友関係をより明確にするために、ウィリアムズと直接の面識がある研究者、及びウィリアムズを直接に研究テーマとしている研究者たちとのコンタクトを取ることである。そのためには、平成24年度に夏期に予定している調査旅行に際して、主に電子メールを利用した事前準備を十分に行い、できるだけ多くの研究者と交流を図ること、またアクセスできなかった資料も含め、イギリス各所に存在しているウィリアムズ関連の資料を時間をかけて読みこむことになる。また、近年では、11月に行われているレイモンド・ウィリアムズ・ソサイエティ主催の講演会ないしは勉強会(詳細は未定)に参加し、そこでも他の研究者との交流を図りたい。 また、イーグルトンやフレドリック・ジェイムソンといった、現代の文化研究の中心的人物の著作の読解を進め、「文化研究」をめぐる自身の考察をより深め、同時に、イーグルトンとのインタビューのための準備を整えたいと考えている。なお、以上の作業の結果は、平成24年4月以降に本務校となった、北九州市立大学文学部の紀要に論文として投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、上述したような理由により、最低でも2回の渡英を予定しており、またそのうち1回(夏期の調査旅行)は、最低でも3週間ほどの長期滞在になる予定であるため、研究費の主たる部分は、イギリスへの渡航費、現地での滞在費などにあてられる予定である。平成23年度に、渡英が1度しかできなかったために生じた繰越金も、平成24年度の渡航費として使用する。 また、文献などの資料については、平成23年度にある程度は揃えたものの、研究を進める上で必須となるような重要な資料の中で、いまだ入手できていないものがあるため、研究費の一部は、そうした文献資料の購入にあてられる予定である。 なお、研究を進める上で必要な物品については、概ね平成23年度に揃えることができたが、調査旅行での資料収集に必要な、プロジェクションカメラ、もしくは持ち運び可能なスキャナーを購入することが必要である。さらに、プリンター関連物品などの消耗品の購入にも、研究費の一部を使用する予定である。
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