研究課題/領域番号 |
23720141
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研究機関 | 釧路公立大学 |
研究代表者 |
松浦 愛子 釧路公立大学, 経済学部, 講師 (70457919)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 19世紀 / 著作権法 / 「作者」 / 戯曲と出版 |
研究概要 |
平成23年度は、まず、英米の著作権法制度に関する理論構築作業の一環として、先行研究となるセビレやウッドマンシー氏らの著作物を入手し、精読を行った。そのなかで、本年度中に19世紀英国大衆文化と出版に関する新たな研究書が出版されたことを確認した。また、平成23年度は、英米における第一次資料調査(平成23年度8月14日-9月19日)を行った。訪問先は、申請の通り、英国図書館、英国国立公文書館、ヴィクトリア&アルバート博物館、米国ニューヨーク市公共図書館、米国議会図書館、米国ハーバード大学付属図書館(ロンドン市、ニューヨーク市、ワシントン市、ボストン市)である。さらに、申請の通り、劇作家ディオン・ブシコーの著作物について劇作品The Long Strikeを中心に資料収集を行った。明らかになったことは、劇作品The Long Strikeは、英米間の再販の通常の流通経路を通り、英国初演ののち米国で出版されたということである。必ずしも劇作家の本をコピーするだけでなく、戯曲が未出版の場合は、速記使用がコピー法の1つであったことが明らかになった。また、当時のフレンチ社のテクストの正統性について、当時の役者が懸念をもっていたことが明らかになった。米国に帰化した英国出身の役者がフレンチ社のテクストに作者の原本に基づき誤りを正す書き込みがなされているテクストを得た。研究結果をとりまとめ、口頭発表を行ったうえで、劇作品The Long Strikeの事例の資料をまとめ、近日中に論文として活字にする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英米著作権法制度に関する理論構築作業、及び19世紀演劇出版の実践に関しては、研究目的の達成に向けて順調に進捗している。特に劇作家ディオン・ブシコーの劇作品The Long Strikeの事例を中心に、当初予期された通りのデータが得られた。一方、19世紀出版文化に関しては、戯曲出版も含め、本年度中に該当分野で新たな文献が多く出版されたため、さらなる作業が必要となった。全体としては、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、調査及び分析をまとめ、その成果を学会発表したうえで、論文投稿をすることが課題である。具体的には、Australasian Victorian Studies Association年次大会 (於: 豪州グリフィス大学 平成24年度4月11日-14日)、及び日本知財学会年次大会(於:大阪工業大学 平成24年度12月8日-9日)において研究発表を行う予定である。学会発表での質疑応答などの成果を踏まえた上で、発表に基づいた論文を最終年度となる24年度中に活字にする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、関連する学会において、研究成果を報告し、情報交換と研究交流を行うことで、今後の研究課題の明確化を図るものとする。そのために海外および国内の学会への参加旅費を計上した。これまで収集した文献の精読を通して成果をまとめたい。しかしながら、資料・文献を補足する必要も考えられるため、出版された文献の入手、他図書館所蔵の相互貸借・複写依頼費を計上した。また、学会発表に対するコメントを受けて、補足的な渡英調査を実施しなければならない可能性があるため、渡英調査を行うための海外旅費を計上した。
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