研究課題/領域番号 |
23720149
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
近藤 康裕 東洋大学, 経済学部, 講師 (20595409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ニューレフト / 文化 / ナショナリズム / 労働 |
研究概要 |
平成23年度は、イギリスの20世紀における文学と文化を、主に労働を中心とした社会的な視点から分析するための土台をなす文献の研究、資料調査、そしてそれらに基づいた研究発表を行った。レイモンド・ウィリアムズを中心としたニューレフトの文化論・社会論は、時代的には1950年代から60年代にかけてに関して論じられることが多いが、モダニティをめぐる論点との関連性が重要であるとの考えから、1920年代から第二次大戦後にいたる文学と文化の言説の中でニューレフトを再考する試みとして、クリストファー・コードウェルとD・H・ロレンスに着目してウィリアムズらの議論を検討する研究に取り組み、これは6月の日本ロレンス協会のシンポジウムにおいて発表した。また、ニューレフトを論じる際には、20世紀におけるナショナリズムと、イギリスのみならずアメリカ等の社会的な諸問題との関係においても、その歴史的意味を検討する必要がある。ニューレフトの論客たちが、資本主義に対する批判をその思想的根拠としていることからして、20世紀における資本のグローバルな拡張と、その裏面にあるとも言えるナショナリズムとが、いかに同時代の文化論に影響を与えていたのかを、ニューレフトのさまざまな論考をテクスト分析すると同時に、ナショナリズムやグローバリズムをめぐる理論的文献を研究することをとおしたニューレフトの文化論の再検討を試みた口頭発表を、11月には日本英文学会関東支部のシンポジウムで発表した。また、上記の発表の基となった考察、発表をとおして得られた知見等を資料的に裏付けるための調査も行ない、成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の中心となるのは第二次大戦後のニューレフトを中心とした文学と文化をめぐる議論の考察であるが、平成23年度の前半には20世紀の前半に係る文化論と社会論を検討しながらそれをニューレフトに関連付ける研究と発表を行なうことができたこと、また年度の後半には、イギリスのニューレフトの言説を、イギリスのみならずアメリカにおけるナショナリズム論との関係から検討し、ひろく19世紀末から現代にまで至る資本主義の変容とグローバル化の進展の中で文学と文化をめぐる議論が持つ意味を検討に附せたこと、そして、予定していた文献の読解、資料調査も計画通りに進捗したこと、以上の3点から、おおむね順調に研究は進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究とその発表を通じて得られた成果や知見を論文のかたちで発表することと、それらを発展させるための理論的な文献の読解、一次資料の更なる収集と整理を行っていく。具体的にはニューレフトが1950年代末から60年代の初頭にかけて現れた言説空間の検討のための資料の読解と分析、ならびに、レイモンド・ウィリアムズの小説作品を理論的に考察しつつ、これをニューレフトの現れた言説の分析と関連付け、ウィリアムズの小説という実践を歴史的な文脈において再検討すること、これらを基軸に研究を進めていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に引き続き、最新の理論的研究に係る文献の収集、読解と、ニューレフト関連の一次資料、二次資料の収集に係る支出が、資料調査のための費用も含め、比較的大きな割合を占める計画である。また、8月末には研究成果を発表するシンポジウムを企画しており、このための支出を予定している。10月末に行なわれる予定のイギリスでの国際シンポジウムにおいては、当該研究と深く関連する発表が行われると思われるので、それに参加し知見を広め、現地の研究者との討議を持つことで、自身の研究のイギリスにおける意義などについても話し合い、より研究内容を深化させるために、これへの渡航、参加費用を予定している。
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