研究課題/領域番号 |
23720152
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
芝 奈穂 愛知学院大学, 文学部, 講師 (80552314)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 英米文化 / 都市史 / 公園 |
研究概要 |
本研究は、現代ロンドンの代表的公園であるリージェンツ・パークの成立過程の調査および19世紀英国都市公園の発展と近代都市計画との関係を考察するものである。1811年にロンドン中心部開発の一環として計画され、著名な建築家ジョン・ナッシュによって設計された本公園に関して、「いかにして、設計当初において貴族的空間として誕生し、それが、中流階級的空間へと変化し、最終的には、一般人が利用できる公共オープンスペースとなったのか」というこれまで充分に検討されてこなかった問題に着目した。2年間プロジェクトの初年となる23年度は、現地調査での史料収集と分析に重点を置いた。ロンドンにある国立公文書館には、リージェンツ・パークを含む王立公園関係文書および図版・地図がマニュスクリプトの状態で数多く保存されており、それらを(1)リージェンツ・パークが設計されるに至った経緯と公園周辺に設計された上流階級向けのテラスハウスについて(2)中流階級的空間として公園内に設置された動物園・植物園の果たした役割(3)一般への開放へのプロセスの3つの観点に注目しながら収集した。また、大英図書館において、当時の新聞や雑誌から当該公園に関する記事の収集も並行して行い、本公園が19世紀イギリス社会においてどのように受容されたかのかについて分析した。特に、造園雑誌、建築雑誌、動物学会誌、植物学会誌、園芸学会誌等、幅広いジャンルを網羅するように努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、本年度の研究は、主に、現地調査での史料収集と分析が中心となった。国立公文書館で収集したリージェンツ・パーク関係文書はほとんどがマニュスクリプトであり、しかも膨大な量に上ったため、史料の読解に重点を置いた。史料の分析から以下の知見が得られた。(1) リージェンツ・パークの設計に関しては、従来、ナッシュ個人の功績によるところが大きいとされてきたが、調査を通して、ナッシュ以外にも、多くの建築家や投機的建設業者たちが、本計画に参画していることがわかった。また、その設計手法も地主貴族によるエステート経営の手法が活かされていることが明白になった。(2) 貴族的空間から中流的空間への変遷において、公園内に1828年に設置された動物園、さらに、1838年に開園した植物園の影響が大きいことが明らかになった。特に後者については、まだ本格的な研究がされておらず、今後、設計当初には予定されていなかった動物園と植物園がいかなる理由で設置され、また、それが、どのようにして、公園全体の一般開放へのプロセスに影響したかについても見ていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度における史料収集と分析の結果を踏まえて、今後は、当該公園が19世紀英国都市公園の発展と近代都市計画に与えた影響について考察していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国立公文書館所蔵のリージェンツ・パーク関係文書および王立公園関係文書は膨大な量になるため、次年度も渡英し、「当該公園が都市公園の発展と近代都市計画に与えた影響」という観点から史料収集を行う予定である。また、関係書籍等の購入も行いたい。
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