研究概要 |
本研究の目的は、シェイクスピアの物語詩とソネット集をエリザベス朝政治的コンテクストの視座から考察すると、「反エリザベス」というコードが内包されている可能性を検証することにあった。 最終年度は、昨年度に実施した研究をベースにしながら、シェイクスピアの詩とソネット集の連関を考察した。特に、ソネット集1番から17番は、Venus and Adonis における、「若い男性に対して、結婚をして、子供を作ることを説得する」というテーマと連関している。シェイクスピアがソネット集を献辞した相手は、サウサンプトン伯であるとの説を踏襲すると、ソネット1番から17番におけるテーマは、これまで、サウサンプトン伯に結婚を促すことを目的としていると考えられてきた。 しかし、シェイクスピアの二つの物語詩が、「反エリザベス」イデオロギーを内包しているという見地から考察すると、ソネット集の「結婚をして、子供を作る」テーマは、物語詩とソネット集の連関を考慮すると、「反エリザベス」イデオロギーを内包している可能性が指摘できるのではなかろうか。特に、ソネット集1番から17番では、戦争用語のイメジャリー(besiege, ornament, tombなど)が散在しており、このようなイメジャリーは、The Rape of Lucrece でも散見することから、最終的には、二つの物語詩とソネット集は、隠されたコード「反エリザベス」イデオロギーで互いに連関することを明らかにした。
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