研究課題/領域番号 |
23720155
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
中村 仁紀 大阪医科大学, 医学部, 助教 (30582564)
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キーワード | S. T.コールリッジ / リベラリズム / 社会進化論 |
研究概要 |
24年度は引き続きコールリッジのリベラリズムを哲学的・政治的側面から論じることを目的として、特に18世紀の生命科学論争における「個体」概念に対する彼の観念論的取り組みがいかに19世紀リベラリズム思想の「個人」の理念と結びついているかを考究した。その点を踏まえ、以下の研究を行った。 (1)コールリッジの『生命論』(Theory of Life; 1816)が19世紀の社会進化論に直接的・関節的に影響を及ぼした痕跡を、H・スペンサーの政治思想のうちから読み取った。コールリッジの「個体」概念が政治的文脈に転用される際、個人の自由を社会制度が制限していく志向性を示していたのに対し、『生命論』に影響を受けたスペンサーの社会進化論では、個人の絶対的自由が競争原理に置いて社会進化を促していく、という「リバタニアニズム」的帰結を導き出している点を明らかにした。その成果は「『生命論』と一九世紀社会進化論―コウルリッジからスペンサーへ」(阪大叢書第七号『移動する英米文学』英宝社(印刷中))で著した。 (2)『生命論』に先駆けて書かれた『瘰癧論』(An Essay on Scrofula; 1816)を、18世紀瘰癧研究史の中で読み直し、コールリッジの瘰癧に対する「認識論的問題」が生命科学の文脈を超えた形で広い適応可能性をもっている点を明らかにした。この成果は"Defining Scrofula: Coleridge's 'An Essay on Scrofula' (1816) and the Medical Concept of 'Constitution' of the Early 19th Century" (大阪医科大学『人文研究』(2012))で著した。なお、この論はリベラリズムの歴史的諸相の研究と呼ぶにはテーマが少々離れているため、本研究に対する補注的意義を持つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コールリッジのリベラリズムの歴史的諸相を論証するにあたり、24年度も具体的な形で成果を示すことができた。 ただし、24年度は当初の予定では、18世紀末のユニタリアン思想がコールリッジのリベラリズムの形成にどのような影響をもっていたのか、という問題に取り組む予定であったが、先に18-19世紀科学思想とリベラリズムとの関係についての論文の作成に時間を割いたため、上記の課題は後回しになっている状態である。ただし、予定の順序が入れ替わっただけであるため、研究の推進上大きな問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、当初24年度に実施する予定であった、ユニタリアニズムから19世紀リベラリズムへと政治思想が展開していく上でのコールリッジの歴史的意義と問題点を考察する。一次資料に基づいた実証的な研究を目指し、夏頃を目途に資料収集を行った上で以降は論文作成に取り掛かる。合わせて、その成果を26年度の日本英文学会にて発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
図書費(350,000) 物品費(50,000) 出張旅費(国内100,000/海外200,000) 論文・報告書作成用印刷費(50,000)] 次年度使用額(158,879円)は、平成25年度に資料収集のための国内外への出張費に充てるため繰り越した
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