本研究では、ベケット文学における歓待の意義について考察を行った。そして、ベケット文学に書き込まれた歓待が西洋の司法政治的歓待の系譜を汲んでいることは明白ではあるが、ベケットは司法政治的歓待の失敗を描くことで、「条件つき歓待」と「無条件の歓待」の二律背反の中で、他者を無条件に受け入れる可能性に限界まで接近しようと試みていることを明らかにした。また、この試みは二つの世界大戦による反省に立つヨーロッパ的な試みであり、同時代の他の西洋の思想家らと共有されるものである。 ベケットに加え、カズオ・イシグロの作品も歓待という観点から考察を行い、20世紀英文学における歓待研究を推進した。
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