研究課題/領域番号 |
23720169
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
齊藤 哲也 明治学院大学, 文学部, 准教授 (10507619)
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キーワード | シュルレアリスム / アンドレ・ブルトン / 認識論 / 芸術 |
研究概要 |
本年度の検討課題として取り上げたのは、シュルレアリスムの中心メンバーであるアンドレ・ブルトンにおける科学的言説の受容の問題である。初年度で得られた成果に基づいて研究を発展させるため、本研究では、初年度で研究対象としたヴォルフ ガング・パーレンが言及し、またブルトンが個人的なつきあいをもった同時代の科学哲学者、ガストン・バシュラールの存在に注目した。バシュラールの科学哲学をとおしてブルトンの論考を検討することで、狭い意味での自然科学の問題に限定されない 、認識論的な問題として、シュルレアリスムにおける「科学」の問題を位置づけることを目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、シュルレアリスムの作家や芸術家たちが、従来の区分では「文学」や「美術」の対象外にあるとされてきた特殊な言説や図像が、いかなる仕方でみずからの言説や作品のなかに導入し、また、それをいかなる仕方で文学や美術に固有な問題として作りかえていったのか、このような文学・美術の創造行為の過程を具体的な考察対象として設置した。問題の所在が端的にあらわれる人物や作品に焦点をあてるために、本研究ではシュルレアリスムに参加した作家、アンドレ・ブルトン、画家のヴォルフガング・パーレン、そして科学哲学者のガストン・バシュラールの知的交流に注目して研究をすすめ、その成果の一部を『ヴォルフガング・パーレンー幻視する横断者』(水声社)として公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として取り組みたいのは、これまで研究してきたアンドレ・ブルトンやガストン・バシュラールの論考から影響を受けた人物たちにおける、科学的言説の受容(利用)の問題である。とくにロベルト・マッタやゴードン・オンスロー・フォードやオスカル・ドミンゲスは、1930年代の後半にパリでシュルレアリスム運動に加わった人物であるが、かれらの理論的文章(いずれもフランス語)にしばしば登場するのは、たとえば「ユークリッド的/非ユークリッド的」といった二分法であり、それは従来、絵画作品が問題となるときに使われてきた「具象/抽象」という枠組みに取って代わる、積極的な価値を担わされている。かれらの絵画にあらわれる特殊な空間表象や図像(ダイヤグラムなど)の問題も同時に視野に入れながら、それぞれのケースを具体的に考察していくとともに、それらを綜合して研究成果を発表することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書に記したとおり、「シュルレアリスム関連図書」「科学史関連図書」「文学・美術史関連図書」を購入し、研究資料を整える。研究初年度に計画されていたが実施できなかった海外の図書館をもちいた資料調査を、次年度に行う。研究は、9月上旬、フランスのパリで3週間ほど実施する予定。
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