1920年代から1930年代のフランスにおいて、たとえばアインシュタインの相対性理論やハイゼンベルクの不確定性原理などは、自然科学を専門領域とする研究者のみならず、一部の前衛芸術家たちのあいだで盛んな議論の対象となっていた。本研究で考察の中心としたのは、1920年代にフランスで活動を開始したシュルレアリスムの作家や芸術家における、これらの科学的言説の受容である。本研究は、作家や芸術家たちが、従来の区分においては「文学」や「美術」の対象外にあるとされてきた特殊な言説や図像を、いかなる仕方で自らの作品のなかに移入し作りかえていったのか、このような創造行為の過程を具体的な例とともに検討していった。
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