• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

大戦間期ガリツィアのポーランド系ユダヤ人作家、画家の芸術思想的系譜とモダニティ

研究課題

研究課題/領域番号 23720174
研究機関東京大学

研究代表者

加藤 有子  東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (90583170)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワードポーランド文学 / ポーランド美術 / ユダヤ文化(ポーランド、ウクライナ、アメリカ) / ガリツィア / イディッシュ語文学 / 多言語性 / 中欧
研究概要

H23年度は「20世紀ポーランドにおける〈マニエリスム〉」をテーマに、ガリツィア出身のユダヤ人ポーランド語作家、画家ブルーノ・シュルツ(1892-1942)の1920年頃の初期絵画作品と蔵書票、図入り蔵書カタログをポーランドで調査した。これらはこれまでほとんど未公開のため研究されておらず、実見したことにより新しい発見も得られた。帰国後はシュルツの絵画作品と蔵書票のイメージを同時代の蔵書票と比較するほか、ポーランドの書物史、蔵書票に関する資料を参照しつつ考察した。世紀転換期から20世紀初頭のガリツィアでシュルツの描いたイメージの時代的、空間的広がりを捉えようというものだが、蔵書票というテーマ自体、あまり先行資料がなく、このテーマ、そして〈マニエリスム〉をめぐる研究はH24年度以降も継続していく。 一方で、ブルーノ・シュルツのこれまでの研究成果は、単著『ブルーノ・シュルツ―目から手へ』にまとめることができた。  さらに、本研究開始時までに行っていた1930年代のルヴフ(リヴィウ)におけるガリツィアのユダヤ人の造形美術、イディッシュ文学領域の活動の調査結果を、ガリツィアの言語、政治状況をめぐる最新の研究、そしてディアスポラをめぐる議論を取り入れて、多文化性に焦点を置きつつ再考した。その成果は、近刊のユーラシア世界研究シリーズ(東大出版会)収録予定の論文「両大戦間期ガリツィアの文芸界とユダヤ人」(第二巻「ディアスポラ論」)にまとめた。このなかでは、とりわけ、ディアスポラの言語イディッシュ語文学の特殊性を明らかにすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ガリツィアの多言語、多文化的状況の総体を捉える試みの一つとして、1930年代リヴィウの文芸界の動きに着目して進めてきたこれまでの調査を、最新のガリツィアのユダヤ人の政治・社会・言語状況に関する研究、そして新たにディアスポラをめぐる理論的研究を参照しつつ、再考、修正し、アップデートすることができた。「世界文学」をめぐる議論にも目を向けることで、イディッシュ語文学の特殊性を考察する手掛かりを得たという手ごたえもある。H23年度に予定していた研究テーマは予想以上に大きく、現在は考察を展開するための基礎を固めた段階であるが、H26年度に予定していたテーマが半分ほど進んでいるため、全体としては相互に補い合っている。予定通りに研究は進み、目的は達成されていると言える。

今後の研究の推進方策

H24年度は、引き続きブルーノ・シュルツの蔵書票のイメージについて、すでに集めた資料をもとに検討していくほか、その思想的系譜について、ベンヤミンやブーバーなどドイツ語圏などのユダヤ系思想家との関連を考えていく。ブルーノ・シュルツの記念年にあたるため、ウクライナ、アメリカで開かれる国際学会に参加し研究成果を発表するほか、国内でも一般公開のシンポジウムを企画する。本研究前半期の成果はH24年度の学会、その後の刊行物で発表する。

次年度の研究費の使用計画

イギリス(9月)、ウクライナ(9月)、アメリカ(11月)で国際学会にエントリー、招待されており、その渡航費を研究費から支出する。旧ポーランド領であり、ポーランド文学の舞台としても頻繁に現れる現ベラルーシ西部国境地帯をめぐる研究ツアー「ヨーロッパ東部境界地域の共有遺産研究III」(クラクフ国際文化センター、在日本EUインスティチュート)にも参加予定。この旅費も研究費から支出する。このほか、シュルツをめぐるシンポジウムの開催費用(講演謝金等)にもあてる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 物語/歴史の操作――ジョナサン・サフラン・フォアの小説の視覚的要素2012

    • 著者名/発表者名
      加藤有子
    • 雑誌名

      れにくさ

      巻: 3 ページ: 226-242

  • [雑誌論文] 物語/歴史と祖型―ブルーノ・シュルツの小説にみられるドイツ語圏の同時代作家の『影響』再考(マン、カフカ、ロート、クービン)2011

    • 著者名/発表者名
      加藤有子
    • 雑誌名

      西スラヴ学論集

      巻: 14 ページ: 89-124

    • 査読あり
  • [学会発表] 目から手へ―ブルーノ・シュルツの短編「天才的な時代」と目、手、足2011

    • 著者名/発表者名
      加藤有子
    • 学会等名
      西スラヴ学研究会
    • 発表場所
      立教大学、東京
    • 年月日
      2011年6月19日
  • [学会発表] Dialogues with 'Authorities' in the Prose of Bruno Schulz2011

    • 著者名/発表者名
      Ariko Kato
    • 学会等名
      ASEEES (Association for Slavic, East European, and Eurasian Studies)
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      2011年11月19日
  • [図書] ブルーノ・シュルツ―目から手へ2012

    • 著者名/発表者名
      加藤有子
    • 総ページ数
      368
    • 出版者
      水声社
  • [図書] ピンゼル2011

    • 著者名/発表者名
      ボリス・ヴォズニツキ編、加藤有子訳
    • 総ページ数
      118
    • 出版者
      未知谷

URL: 

公開日: 2013-07-10  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi