研究課題/領域番号 |
23720177
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
有馬 麻理亜 近畿大学, 経済学部, 講師 (90594359)
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キーワード | シュルレアリスム / アンドレ・ブルトン / 理想主義 / 第二次世界大戦 / ジョルジュ・バタイユ / トリスタン・ツァラ / ルイ・アラゴン / 宗教性 |
研究概要 |
本年度の主な成果は、平成24年度に行なった当該研究の成果を発表である。口頭発表については、まず2012年10月に日本フランス語フランス文学会秋季大会(於神戸大学)で、「1930年代におけるトリスタン・ツァラとアンドレ・ブルトン」という題のもと発表した。ダダとシュルレアリスム運動の提唱者であるこの二人の詩人について、先行研究は常に対立関係、あるいはライバル関係を論じてきた。本発表は30年代共に活動した時期に注目し、両者の思想に共通する理想主義がこの歩み寄りを可能にし、彼らの思想の転換期に不可欠な再会であったことを論じた。この発表に準じた論文は現在査読中である。もう一つの口頭発表は、2012年10月日本フランス語フランス文学会関西支部大会(於芦屋大学)で「アンドレ・ブルトンにおけるイデオロギーとしての文体―「デュシェーヌ親父の帰還」をめぐって―」という題のもと行なった。第二次世界大戦後のブルトンの思想の変化を大衆言語の使用法を例に文体の面から分析したものである。この発表の内容は、『関西フランス語フランス文学 第19号』に掲載が決定している。一方、昨年度から準備していた、両大戦期間におけるブルトンとバタイユによるマルクス=フロイト主義の受容に関する論文(「共鳴とすれ違い-「コントル=アタック」前後のブルトン、バタイユそしてライヒ-」)も既に執筆を終えており、こちらは平成25年の雑誌公刊を待っている状態である。これらの成果は、いずれも交付申請書に記載した、30-40年代におけるブルトン思想と、彼と関わった作家との関係についての分析という当該研究の目的と計画に沿ったものである。また、交付申請書に記載した通り、ブルトンと異なる立場にあったが、理想主義共通点のある作家(特に宗教色がある作家)に関する調査も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文発表に関しては、投稿から公刊までの時間があるので、予期していたよりも少々時期が遅れることはあるが、平成24年の成果発表については、口頭発表、論文ともにおおむね予定していた通りに行なうことができた。また平成24年度は、研究者にとって未知の分野である「いままでブルトンとあまり比較・対照されていなかった同時代の作家との関係」という問題に取り組む予定となっていた。この問題に関しても、ほぼ予定通り準備ができた。上記が全て基本的に申請書に記した目的と計画に一致しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の計画、あるいは目的にすでに記載した通り、平成25年度以降は主に(1)平成24年度の研究(特にいままでブルトンとあまり比較・対照されていなかった同時代の作家との関係)を継続 (2) その成果を学会、研究会等において公表する (3) 作家たちの思想や倫理に30-40 年代の歴史的状況がいかに作用しているのか、そしてそれらが作品にどう表れるのかという本研究の結論へと発展させるよう努める、という3つの課題に取り組む予定である
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画はおおよそ申請書にすでに記載した計画に必要なものに当てられる予定である。具体的に言えば、研究に必要な資料研究のための渡仏、学会等の成果公表の旅費、文献となる書籍の購入、あるいは必要な パソコン周辺機器(印刷用インクやバッテリー等消耗品)の購入を予定している。
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