研究概要 |
前年度に引き続き、ナポリ国立図書館においてゲラルド・マローネ関連アーカイブの全容把握に努め、実際にいくつかの資料を閲覧した。「全容把握」が必要なのは未だ包括的なマローネ関連資料の調査や研究がないためであるが、ローマ大学にあるマローネのアーカイブもほぼ同じ状況である。そこから両機関の相互補完性を検討する役割を自ら担う覚悟にいたった(次の研究計画に引き継がれる)。ナポリとローマでの協議(ゲラルド・マローネjr.氏、ダンブロージョ教授、タッデイ研究員)から20世紀初頭における短詩形ブームについてさらなる示唆を得た(2013/9)。特にマローネjr.氏とは、ナポリ市郊外モンテ・サン・ジャコモにある図書館(その他の資料が未整理のままおかれている)の状況が確認できた(2014/2)。ここも未整理であり研究者の手を必要としている。 当年度に参照できた資料の分析を経て、前衛の多様性をあらためて認識するにいたっている。これまで対象外としていた時代(1930年代以降)についても、副次的な未来派との定見に縛られずに、積極性あるものとしてとらえていかなければならない。すなわち未だ「驚異的な短さの詩」を偉大とみなしていたマローネのブエノス・アイレス時代の活動(彼地での友人パオロ・ヴィータ・フィンツィによる文芸社会評論誌Domani [1943-45]まで含む動き)、さらには雑誌『ラ・ディアーナ』の同人であったリオネッロ・フィウーミがクニ・マツオと共に編んだ日本語詩アンソロジー(伊1935, 仏1939)などが掘り起こすべき、前衛と短詩形の継続史としてある。
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