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2012 年度 実施状況報告書

モンテーニュにおける宗教・哲学思想の変貌―トリエント公会議を背景に―

研究課題

研究課題/領域番号 23720179
研究機関青山学院大学

研究代表者

久保田 剛史  青山学院大学, 文学部, 准教授 (60555382)

キーワード仏文学 / 思想史 / モンテーニュ / トリエント公会議
研究概要

平成24年度は、フランスにおけるトリエント公会議(対抗改革運動)の神学・哲学的影響を検討すべく、16世紀後半のフランス・カトリック陣営による宗教論争文集を調査し、そのうち(アウグスティヌス著『神の国』の訳者として名高い)ジャンシャン・エルヴェや(モンテーニュの友人でもあった)ジャン・マルドナをはじめとする、カトリック神学者たちの神学書や論争文について研究した。また、(16世紀フランスにおける対抗改革運動の重要人物とされている)ロレーヌ枢機卿に関する著書・参考文献についても、基本的な資料を中心に読解を進めた。これらの神学作品は、モンテーニュの宗教思想を形成した基盤のひとつである以上、今年度の調査は上記の資料を読み解きつつ、『エセー』に見られる宗教思想と照らし合わせて検討することに重点を置いた。
さらには、研究課題の一次資料である『エセー』(1580年版、1582年版、1588年版、1595年版)についても、前年度から引き継ぐかたちで段階的読解を進めた。とりわけ今年度は、「祈りについて」(第一巻56章)と「レーモン・スボンの弁護」(第二巻12章)、および第一巻・第二巻の比較的短い章を中心に、加筆文や削除文について検討を行った。以上の研究成果については、所属研究機関内の紀要雑誌において、平成25年度に発表する所存である。
なお、今年度の方策として掲げていた「(16世紀後半の一般信徒に向けた)教理問答に関する資料調査」については、予算および時間の制約上、作業を行うことはできなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の段階では、①(16世紀後半の一般信徒に向けた)教理問答に関する資料調査を通して、トリエント公会議以降の宗教感情について究明すること、②前年度および今年度の資料調査と研究をふまえて、一つの論文を執筆すること、の二点が今年度の研究目標であった。
そのうち、①については、予算および時間の制約上、達成することができなかった。というのも、16世紀後半に出版された教理問答については、フランス(とりわけモンテーニュの出生・生存地であるボルドー)の図書館において、数週間の資料調査を行う必要が生じるからである。とはいえ、現時点で読み進めた参考文献や資料についても、当時の教理問答に関する貴重な神学的情報が書かれていたので、①については、文献収集に余分な時間を費やす必要がないものと考えている。
②についても、年度内に達成できなかったものの、所属研究機関内の紀要雑誌において次年度中に発表する予定で、現在のところ作業を進めている状態である。

今後の研究の推進方策

まずは、今年度に公表できなかった「平成24年までの研究成果」(トリエント公会議以降における、カトリック陣営による論争文集の戦略的出版について)について、論文の形式で発表したい。
次に、当初の(最終年度における)目的である、16世紀後半のキリスト教思想(おもにカトリック派の護教論)と懐疑主義との融合について、アウグスティヌスを結節点と考えたうえで、調査を行ってみたい。とりわけ、ジャンシャン・エルヴェをはじめとするカトリック派神学者たちが、(アウグスティヌスやキプリアヌスなどのギリシャ・ローマ文芸に通じた)ラテン教父の護教論を焼き直すかたちで、カルヴァン派に対抗する論争文を執筆していたことに注目するならば、異教思想とキリスト教思想の融合という、人文主義の重要なテーマが、トリエント公会議以降の神学・哲学的思潮に見られるのである。モンテーニュの宗教・哲学的思想も、こうした歴史・文化的背景のもとで読み取られるべきであろう。

次年度の研究費の使用計画

当初の予算計画通り、懐疑主義関係に関する若干の参考文献を購入すべく、書籍代として1万円を使用したい。

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公開日: 2014-07-24  

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